実践的アンチエイジング講座

 皆さんは、1年のうちで一番寒いといわれる大寒(1月20日前後)を中心に各地で行われている、寒中水泳や空手などの寒中滝浴び修業、あるいは寒中裸参りなどを、ニュースや写真で見たことがあると思います。
 青森県弘前市鬼沢地区の鬼神社(きじんじゃ)では、神事として、五穀豊穣・家内安全を願い、大きな樽に冷水を入れ、フンドシ一本の裸の男たちが「よっしゃ」の掛け声と共に樽に飛び込む。
 周りの男たちはその樽に容赦なく雪を放り込む。
 見ていて、寒いだろうな、よく風邪をひかないものだと不思議に思うが、何故かそこだけが熱気がこもっている。
 この鬼神社の裸参りの神事は、400年ほど前から行われているという。
 このような寒中水泳や寒中滝浴び修業、裸参りで、1回でも風邪をひき、あるいは肺炎をおこし死人が出たなら、400年も続かなかったであろう。
 しかもこれに参加する人たちは、寒さに強くなるために、特別訓練を受けた人たちではない。
 千葉県館山市の南房総の海で行われている寒中水泳大会や、愛媛県大洲市の肱川(ひじかわ)で行われている寒中水泳には、中学生や高校生たちも参加している。
 実は私自身も、寒中水泳や寒中滝浴びではないが、平成13年(二〇〇一)より、真冬も含め365日素足で、下半身はパンツとジーパンだけで、平成22年(二〇一〇)より、上半身もTシャツ1枚と、冬は長袖ではあるがTシャツ1枚と、それにジャケット1着羽織るだけで過ごしている。
 つまり、私は上半身も下半身も年中2枚しか着ない薄着の生活をしている。
 周りのひとは、寒くないの、身体が冷えるぞ、風邪ひくぞと心配してくれるが、寒いどころか、身体がホカホカし、それまでは年に1回以上必ず風邪をひいていたのが、素足で生活するようになってから1回も風邪をひいていない。
 それはこうであった。
 平成12年(二〇〇〇)の健康診断で、医者から「お前危ないよ」といわれた。
 どうしてというと、
 「血圧が高い」というのである。
 そのときの私の血圧は、下が100、上が140であった。
 どうすればいいのというと、「太り過ぎだから体重を落とせ」といった。
 その頃はまだ、メタボリックシンドロームという言葉が使われていなかったが、身長154㌢のチビのくせに、体重は62㌔と、いわゆるメタボであった。おまけに私は猫背であった。
 私、58歳のときである。
 よし!それなら体重を落とそうと、その翌日から野菜中心の食生活をし、1年間で7㌔減量した。
 そのとき、その減量方法が面白いということで、NHKテレビ、伊東四郎と竹下景子の『疲労回復テレビ』に出演し全国放送になった。
 その年の冬、つまり平成13年の冬になって私は、靴下とズボン下を履いていないのに気がついた。
 私は子どもの頃から寒がりやで、冬には厚いメリヤスのズボン下を欠かしたことがなかったし、冬には必ず1回以上は風邪をひき、寝込むこともあった。
 また私は足が汗っかきで、臭くなるので、夏はできるだけ靴下を履かないでいた。
 が、その冬には、靴下もズボン下も履くのをすっかり忘れていたのである。
 つまり、寒さを感じない、あるいは寒さに強い身体になっていたのである。
 そして、平成22年の冬、身体は上半身も下半身も一つの身体なのに、下半身だけ寒さを感じないのはおかしい。上半身も寒さを感じないのではないかと、その冬から上半身もTシャツ1枚にジャケット1枚で過ごした。
 そのとき初めて、「あ、オレは野菜中心の食生活を行ったことで体質が変わったんだ」と気がついた。
 が、何がどう体質が変わり、寒さに強い身体になったのかがわからなかった。 私は、私がやっている健康法を理論的に裏付けるために、健康に関する様々な本を読んでいる。
 その中の一冊、『体が若くなる技術‐ミトコンドリアを増やして健康になる』(大田茂男著=サンマーク出版刊)という本を読んだときである。
 体のエネルギーはミトコンドリアによってつくられる。そのミトコンドリアを充分に働かせるには、
 ①「マグロトレーニング」をする。
 ②背すじを伸ばすこと。
 ③寒さを感じること。
 ④空腹になること。
 大きく分ければこの四つしかありません。
 と書いてあった。
 あッ、これだ!!体質が変わったのは、私は野菜食をやったことにより、ミトコンドリアが充分に働く身体に変わったんだということがわかった。
 つまり、寒くなると、ミトコンドリアが、こりゃ身体の一大事だ、それエネルギーを燃やせと、一生懸命に熱をつくってくれる。そのために身体がホカホカし、寒さを感じなくなるのである。
 皆さんの周りに、若い人だけでなく、高齢者になってもエネルギッシュに働き、あるいは活動している人がいるかと思います。こういう人は間違いなく、ミトコンドリアが活発に活動している人です。
 さて、ミトコンドリアとは一体なんであろうか。
 簡単にいうと、人間の細胞の中にある小器官で、1個の細胞の中に200~1000個あるといわれている。そのミトコンドリアが酸素を取り入れ、エネルギーを作り出している。
 このとき、その酸素の一部が活性酸素に変化する。
 この活性酸素が、老化や病気の原因ともなる。
 一方では活性酸素は、呼吸から侵入するウィルスや病原菌を退治するから諸刃の刃である。
 このミトコンドリアは、病気をしない身体づくりと長寿、アンチエイジングにとって、最も重要なものの一つである。
 近年このミトコンドリアが注目され、前述したような『体が若くなる技術‐ミトコンドリアを増やして健康になる』や、『ミトコンドリア不老術‐老いないカギは「ミトコンドリアを鍛える」にあった』(日置正人著=幻冬社刊)などの本が出ている。
 寒中水泳や寒中滝浴び修業、裸参りをしている人の顔を見ると、いかにもエネルギッシュな顔をしている。まさに、ミトコンドリアが活発に活動している身体であるからである。
 さて、アフリカ大陸の大地溝帯(グレート・リフト・バレー)の西側にいたサルはどうなったであろうか。
 以前と同じ熱帯雨林であり、樹上には果実があり、どう猛な肉食動物が来るとすぐ樹上に逃げた。
 サルは働いて食べ物を探す苦労もなければ、頭を使う必要も、あるいは敵と戦う必要もなかった。
 仕事らしい仕事といえば、オスがメスに果実を取ってきてあげたり、メスがオスザルを膝枕をして蚤をとってあげる程度で、毎日のんべんだらりと暮らしていた。サルにとっては楽園であった。
 そのサルはほとんど進化することなく、現在に至っている。
 それがゴリラであり、若干進化したチンパジーである。
 最新の研究によると、ゴリラのゲノム(全遺伝情報)の人間との違いは、わずか1・75㌫で、98・25㌫は人間と同じであった(英国などの国際チーム解読)。
 また、チンパジーと人間のゲノムの違いは、さらに小さく1・37㌫で、98・63㌫は人間と同じであった。
 人間がゴリラが共通祖先から枝分かれしたのは、凡そ1000万年前。チンパンジーと人間が枝分かれしたのは凡そ600万年前と推定されている。
 一方、東側の草原に出たサルは、生きるためにまず食べ物を探さなければならなかった。肉食獣が来ると逃げるか、それと戦わなければならない。逃げ遅れたものは肉食獣の餌食となった。
 寒くなると寒さから身を守らなければならないなど、過酷な条件のもとに置かれた。
 サルは、寒さと外敵から身を守るために洞穴を見つけそこで生活した。
 次にサルが覚えたのは火を使うことであった。
 一人では腕力もなく弱いサルは、やがて集団で生活するようになった。
 こうして、長い年月をかけ、一歩、一歩、サルが人間に進化してきた。
 まだ原始的ではあったが、人間に進化したこのような集団があっちこっちとたくさん出来ていった。
 その集団が、食べ物を食い尽くすと、生きるために別の集団に行って食べ物を奪うこともあった。
 食べ物を巡る集団同士の争い。これが人間が集団同士で争う戦争の始まりである。
 これが人間の本性となり、21世紀になった現在なお続いている。
 尖閣諸島問題も竹島問題も、人間的本質はこれである。
 一方、その地域に食べ物が無くなると、食べ物を探し、次の地域に移動して行った。
 人間はこうして、何万年もかけ食べ物を探し、次へ次へと移動し、全世界に広がっていったのである。
 人間は過酷な環境の中で、その環境に適応するために自らを進化させ、生きて行くに必要な筋肉と脳を発達させて来たのである。
 生きて行くのに必要な筋肉を動かし発達させる、あるいは脳を働かせ発達させる。これがエンゲルスがいう、すなわち労働、身体的労働であり、知的労働である。
 人間の筋肉の発達は、42・195㌔を休まず2時間8分1秒で走る筋肉と心臓の強さを獲得した。42㌔を休まず走れる動物は地球上には人間以外にはいない。
 また、自分の体重の3倍以上を持ち上げる筋肉を獲得。あるいは、100㍍を9秒63で走る筋肉を獲得した。
 チーターは100㍍を3・5秒で走るらしいが、せいぜい170㍍から、長くても500㍍ぐらいである。
 また、プロレスの選手のような強靭な身体と、体操選手のような柔らかい身体を獲得した。
 人間がどこまで進化したか、それを競ってきたのがオリンピックであろう。
 脳の進化は、地球より遥か離れた小惑星イトカワや、火星に探索機を飛ばすまで進化した。
 さて、『人間が猿になるについての労働の役割』はわかった。が、それとアンチエイジングはどう関係があるの??
 進化の反対は退化である。
 人間の身体で必要が無くなったもの、あるいは筋肉や脳などは、使わなければ退化する。
 人間の身体で、必用が無くなって退化したのが尾骨である。お尻の肛門の上にちょこんと出ている骨である。
 この骨は、人間がサルであったときの名残である。
 尻尾は、サルの時代、樹上で生活していたとき、バランスを取ったり、体を支えたりといった役割を担っていた。
 それが地上で生活するようになってから、必要がなくなり、使わないうちに退化してしまった。
 これは、サルから人間へなるときの進化の過程での分かりやすい退化である。
 退化は、私たちの日常の生活でも起こり得る。
 私の父は、87歳で運転免許証を更新した。が、どうしても感覚が鈍くなり、車をぶっつけたり、ひっくり返したりしたので、危険だと思い、鍵を取り上げた。
 父は百姓であるから、それまではトラクターを動かし畑仕事をし、冬に備えて、薪ストーブ用の木を、1・7㌔ほどあるマサカリでもって割っていた。
 が、鍵を取り上げてからは外に出るのをおっくうがり、ほとんど歩かなくなってしまった。
 それから5年、父の脛を見てびっくりした。
 筋肉が衰え、骨に皮がついているだけの、百姓をやっていたときの三分の一程度の太さの脛になっていた。
 つまり、脛の筋肉を使わないために、筋肉が退化したのである。
 当然、介護なしでは歩けない身体になっていた。
 このように人間の身体は使わなければ、エンゲルス流にいうと、労働しなければ退化するのである。
 これは脳についても同じである。
 先進国は長寿と共にアルツハイマー病になる人が多くなっている。アルツハイマーは、高齢に伴う一種の脳の退化である。
 が、アメリカのラッシュ大医療チームによると、高齢による脳の退化は避けられないが、人生に目的を強く意識しているひとは、アルツハイマーの進行が非常にゆっくりと進むという研究結果を発表している。
 私の身近なところでは、95歳で青森山田学院の理事長に就任した、元青森大学学長の盛田稔先生がまさにそうである。脳を使っているのである。盛田先生は、あと10年ぐらいは仕事をしたいといっている。
 アンチエイジングにとって一番大切なことは、盛田先生のように、60歳はまだ若者で、80歳になろうが90歳になろうが、身体と脳を働かせ、退化を遅らせることでる。

 一八七六年(明治9年)に、マルクスの盟友であるエンゲルスが『猿が人間になるについての労働の役割』を執筆。それから20年後の一八九六年に雑誌『ノイエ・ツァイト』で発表した。
 明治9年というと、「少年よ、大志を抱け」で有名なクラーク博士が、札幌農学校開校と同時に教頭として招かれた年である。
 ダーウィンが、進化論『種の起源』を発表したのは、エンゲルスが『猿が人間になるについての労働の役割』を書く17年前の一八五九年である。
 ヨーロッパでは産業革命が進み、すでに工業化社会に入っていたが、まだ人間は神が創ったものだと信じられていた時代である。
 そこにダーウィンが、人間はサルから進化したともとられる『種の起源』を発表したものだから、キリスト教の聖職者たちから激しく攻撃された。
 それからわずか17年後にエンゲルスが、人間がサルから進化したと断言し、どのようにして進化したかを具体的に表わしたのが『猿が人間になるについての労働の役割』である。
 この著でエンゲルスは、「労働は人間生活全体の第一の基本条件であって、しかも、ある意味では労働が人間そのものをつくりだした」として、
 ①人間の先祖となるサルの一種が最初は樹上で生活していた。
 ②それが何らかの理由で地上で生活しなければならなくなった。
 ③そのために直立二足歩行しなければならなくなった。
 ④直立歩行したことによって、手が自由になり、手でこん棒、あるいは石などを持ち、敵から身を守った。
 ⑤その手がやがて、火打石を刀に加工するなど、新しい技能を獲得していった。
 ⑥手は労働のための器官であるだけでなく、それはまた労働の産物である。
 ⑦その手の労働によって、筋肉や靭帯などが発達し身体が作られた。
と、エンゲルスは、サルから人間になるについての労働の役割と、その過程を予測している。
 エンゲルスは人類誕生の場所を、「熱帯のどこかにー多分いまはインド洋の底に沈んでしまっている大陸のうえにー」と書いている。
 解剖学者レイモンド・ダートが、アフリカで猿人の化石を初めて発見したのは、エンゲルスが『猿が人間になるについての労働の役割』を書いてから半世紀近く後の、一九二四年である。
 今は、化石の発見やDNAの解析などによって、人類の起源はアフリカで、サルが人間になるについての全容がほぼ明らかになってきている。
 それはこうだ。
 人間の祖先となるある種のサルは、その昔アフリカの熱帯雨林で樹上生活をしていた。樹上は果実など食べ物が豊富で、大型動物、あるいはどう猛な肉食動物も少なく、サルたちにとっては楽園であった。
 ところが、1000万年ほど前に、アフリカで大規模な地殻変動が起こり、南北に蛇行する大きな谷であるアフリカ大地溝帯ができた。
 そのことによって、アフリカ大陸の東部が、東西に分断され、大地溝帯の西側は、これまでのように温暖湿潤な地域であったが、東側は大西洋から吹き込んでいた湿った風が遮られ、熱帯雨林が消滅し、草原と変わってしまった。
 東側に取り残されたサルはやむ得なく草原で暮らさなければならなくなった。
 さて、草原に出たサルはどうなったであろうか。
 草原は、熱帯雨林で生活
していたときは、木から木へと飛び移り移動していたが、草原ではその木がない。
 サルは仕方なく立って、二足歩行で移動することにした。
 この直立二足歩行が、サルから人間への決定的な分かれ目となった。
 サルが直立二足歩行することによって、何がどう変化したのであろうか。
 まず、これまで木から木へと渡る器官であった手が空いた。
 サルは、その手で物を持つことを覚えた。手は次第に、物が持ちやすいように、親指と他の4本の指が向き合ってきた。やがて、手は石や棒など、原始的な道具が使えるようになってきた。
 草原にはどう猛な肉食動物がいた。樹上で生活していたときは、その外敵から身を守るのに樹上に逃げればよかったが、草原では逃げ場所がない。思わず、手に手ごろなこん棒を持って応戦することもあった。
 しかし、逃げられず食い殺されるサルもいた。事実、頭蓋骨にヒョウの牙によって穴を開けられた猿人の化石が見つかっている。
 次に変化したのは喉の構造である。
 直立することによって咽頭が下がり広がって、複雑な音声が出せるようになってきた。
 草原に出たサルは、相手をかみ殺すような強い牙もなければ、ひっかく爪も、猛獣から逃げるための早い足も持たない、弱い動物であった。
 外敵から身を守るためには一人では敵わない。そこで集団で生活するようになってきた。集団で生活すると、お互いの意思の疎通が必要になってくる。そこから簡単な言語が生まれた。
 草原には果実のなる木がなかった。小動物を捕まえて食べた。時にはサルより大きな動物と出会うことがあった。そんなときは集団で、協力し合って捕まえた。
 サルは火を使うことを覚えた。動物の肉は、生より焼いた方が食べやすく、また美味しく消化も良かった。
 草原に出たサルは、こうして手を使い、道具を持って労働し、集団で生活をし、言語を話すことによって、脳の発達を促した。
 また、直立二足歩行することによって全身を、他の動物では考えられないほど自由に動かせるようになってきた。それに伴い様々な筋肉が発達してきた。
 そこから、気の遠くなるような長い長い年月をかけて、現人類と進化し、発展してきた。
 この進化の根底となるものが、直立二足歩行と、それに伴う労働あるいは運動である。
 これが、サルから人間への進化であり、発展過程である。

 

 「身体を知ろう」の最後は筋肉である。
 私の父は87歳で運転免許証を更新したが、車をぶっつけたり、トラクターをひっくり返したりしたので、危ないと思い車の鍵をとりあげた。
 そうすると88歳からほとんど歩かなくなった。
 それから2~3年して歩くたびに足がプルプル震えてきた。父の脛をみると、脛の筋肉がすっかり衰え、文字通り骨と皮(皮膚)だけになっていた。
 93歳でとうとう車椅子の生活になってしまった。
 大腿四頭筋や前頸骨筋、下腿三頭筋など、脛の筋肉が衰えてくると、歩くことさえ困難になる。
 また、難病で筋ジストロフィーという病気がある。
 この病気は、身体の筋肉が次第に衰えてきて、立つことも、歩くこともできなくなり、最後は心臓を動かす心筋の働きが衰え、死に至るという病気である。
 このように筋肉は、骨がばらばらにならないようにしっかりと支え、内臓が飛び出さないように身体を包み、身体を自由自在に動かすための重要な役割を担っている。
 筋肉には、大きく分けて骨格に付着して身体を動かす骨格筋。内臓などの壁をつくる、内臓筋とも呼ばれる平滑筋。心臓を動かす心筋の3種類の筋肉がある。
 また筋肉には、自分の意思で動かすことの出来る随意筋と、自分の意思で動かすことのできない不随意筋がある。
 骨格筋は、自分の意思で動かすことができるが、血管や内臓などの平滑筋や、心臓を動かす心筋などは自律神経やホルモンなどでコントロールされている。
 骨格筋は400種類以上あり、その重さが、成人の男性で体重のおおよそ4割を占めているというから、如何に筋肉が大事かがわかる。
 成人の男性というのは、女性の場合、男性よりどうしても筋肉量が少ない。男性でも、スポーツ選手となると筋肉の占める割合がもっと大きいであろう。
 私の父は、足が冷たいといって、夏でもコタツに足を入れていた。
 人間の体温は、脇の下で36℃~37℃ある。
 その熱が、運動をしているとき、あるいは食事をしているとき、昼と寝ているときでは違うが、筋肉や肝臓、胃腸などでつくられる。が、一番多くつくられるのが筋肉である。
 つまり、父は筋肉が衰え骨と皮だけになってしまったため、熱をつくることができなかった。だから夏でもコタツに入っていたというわけである。
 女性に冷え性が多いのは、筋肉量が少ないことも大きく関係している。
 しかし筋肉は、主に骨格筋であるが、運動することによって90歳になってからでも鍛えるができる。筋肉を鍛えることは、当然老化を遅らせる。つまりアンチエイジングにもつながる。
 筋肉運動については、数え切れないほどたくさんの本が出ており、またジムもあるので、ここでは省略する。
 しかし、骨格筋でも鍛えにくい筋肉もある。
 たとえば、見た目で老化がはっきりと出、一番目立つのが顔のシワである。
 顔面の皮下には、前頭筋、皺眉筋、鼻根筋、眼輪筋、小頬骨筋、大頬骨筋、笑筋、口輪筋、下唇下制筋、口角下制筋など、たくさんの筋肉があり、顔の表情をつくっている。
 これらの筋肉も加齢と共に衰えてゆく。勿論それだけではないが、その結果、皮膚に張りがなくなり、皮膚が弛み、シワが出てくる一因にもなっている。
 顔の筋肉はなかなか鍛えにくい。が、笑ったり、歌ったりして顔の筋肉を動かすことで顔の筋肉を鍛えることができる。鏡を見ながら、口を大きく開け、歌ってみよう。顔面の筋肉が動くのがよくわかる。

 

kinniku.jpg 『からだのしくみ辞典』(成美堂出版)より


 

 先ごろ、私の父の弟の妻、つまり義理の叔母が亡くなった。享年81歳であった。
 現在、女性の平均寿命が86・39歳(平成22年)であるから、今では81歳でも平均寿命に達しないちょっと早い死ということになる。
 私の父の兄弟は4人である。長女、そして長男である私の父、次男、三男の4人である。
 最近、女性が年上という夫婦も増えてきているが、一般的な夫婦は、妻が幾つか年下という夫婦が多い。
 たとえば、妻が夫より三つ若い夫婦だとしよう。
 男性の平均寿命は79・64歳(平成22年)である。
 男性と女性の平均寿命の差は約7歳で、女性の方が約7年長く生きることになる。
 この夫婦の場合、7+3で、妻は夫が亡くなってから未亡人として10年生きることになる。これが一般的な夫婦の晩年の姿である。
 ところがである。私の父の男兄弟が3人とも、妻が夫より年下にもかかわらず先に亡くなっている。
 長男である私の父は現在93歳。87歳のときに運転免許を更新し、93歳の誕生日まで350mlの缶ビールであるが酒を飲み、毎日数本のタバコを吸っていた。
 次男は現在87歳。85歳までシルバー人材センターに登録し、働いていた。
 三男は現在84歳。今なお現役で働いている。
 3人とも男性の平均寿命を遥かに上回っている。多分、父の兄弟は3人とも、現在の健康状態を見ると100歳前後までは生きるであろうと思っている。
 私の祖父は男2人、女2人のやはり4人兄弟であった。祖父は明治26年(一八九三)生まれで、83歳で亡くなったが、祖父の一番下の弟は現在100歳である。
 慶応3年(一八六七)、江戸末期に生れた我が家の初代である曽祖父は、平均寿命が40歳の時代に82歳まで、曽祖母は79歳まで生きている。
 我が家は、一般的にいういわゆる長寿の家系である。
 何故長寿であろうと考えたとき、私は免疫力の強い遺伝子を持った家系ではなかろうかと思っている。
 何故なら、曽祖父母も、祖父の兄弟が1人だけ40代でがんで亡くなった他、父の兄弟も、私の兄弟も、私の子供も、そして孫も、今のところ、がんを含め内科的な病気で入院したことがないからである。
 私が40歳になったとき、我が家が長寿の家系であることに気づき、80歳まで現役で働こうと会社をやめ、現在の仕事を見つけた。
 それから30年、長寿の秘密がわかった現在、私は100歳までを仕事の目標にしている。
 病気をせず、健康で長生きをし、仕事ができることが、アンチエイジングにとって最も重要なことの一つである。
 その健康を守る中心となるのが免疫力である。
 しかし、免疫細胞なり、免疫システムは複雑なので、わかり易く比喩的に説明しよう。

 免疫細胞は身体を外敵から守ってくれる勇猛果敢な戦士である
 免疫力の弱い人は、風邪をひきやすく、がんなど様々な病気にもなりやすい。
 免疫細胞とは何であろうか。簡単にいうと、身体を外敵から守ってくれる勇猛果敢な戦士である。
 免疫細胞の戦士たちには、細菌やウイルスなど、身体に入ってきた敵を見つける者、敵襲来の情報を伝達する者、攻撃の開始を命令する者、武器を作る者、攻撃する者、それらを元気づける者などがあり、それらが一つのシステムとして外敵から私たちの身体を守ってくれている。
 免疫細胞の役割を大きく分けると、
 ①、身体の中に入ってきた細菌やウイルス、あるいは寄生虫などを見つけ、それを攻撃しやっつける。
 ②、身体の中で作られるがんなどの異常細胞を見つけて、それを抑制しあるいは撲滅する。
 ③、一度逃がしてしまった細菌やウイルスを、もう二度と逃さないぞと、そのウイルスを監視し、入ってきた場合攻撃しやっつける新たな戦士をつくる。
 免疫細胞は、この③ように学習能力がある。これを適応免疫、あるいは獲得免疫という。
 それを応用したのが、インフルエンザの生ワクチンや、子宮頸がんワクチンなどのワクチン類である。
 細菌、ウイルス等外敵から身体を守る仕組み
 1、皮膚・粘膜でブロック
 細菌の侵入はまず皮膚がブロックしてくれる。
 口や鼻に入った場合は、粘膜によって体外に排出される。それがくしゃみ、あるいは扁桃腺である。また唾液には殺菌作用がある。
 2、胃でブロック
 胃からはpH2ぐらの強い酸性の胃液が出ており、細菌を殺す。pHは酸性からアルカリ性の間に0~14の目盛りの数字をつけ、7が中性で数字が小さくなるにしたがって酸性が強くなり、7より大きくなるとアルカリ性が強いということになる。pH2は殺菌力のある、かなり強い酸性ということになる。
 3、腸でブロック
 身体に入った細菌やウイルス、あるいは異物を退治せんと、次に待ち構えているのが腸である。
 腸は、腸に入ってきたものが有害であるか無害であるかを見分け、有害であればそれを退治し、あるいは排除してくれる。
 腸環境を整えることが、即健康につながる。
 4、血液でブロック
 それでも防ぎきれなかった場合、最後の砦は血液である。
 血液では、白血球という戦士が待っており、細菌やウイルスをやっつけてくれる。
 このように身体には、幾重にも身体を守る仕組みが備わっている。これが身体を守る免疫システムである。
 もちろん、免疫力、あるいは免疫システムは、食生活や日常の生活を変えることによって高めることができる。それが、アンチエイジングである。
 免疫細胞はどこで造られるか
 免疫細胞の主要なものは白血球であるが、白血球は骨髄で造られ、その約30㌫はリンパ球である。
 このリンパ球が通る管、リンパ管が全身に張り巡らされ、細菌や異物が入ってこないか、いってみれば24時間体制で私たちの身体を見守っていてくれている。
 その他、免疫器官として、胸腺、リンパ節、血管、膵臓、腸などがある。

 女性には、女性であるがゆえに女性特有の病気がある。
 がんでいうなら、女性のがんでの死亡率の第4位は乳がん、第6位は子宮がん、第7位は卵巣がんと以外に高い。

 乳房
 tibusa.jpg女性の乳房は、人間のみならず哺乳動物のすべてが、生まれたばかりの子に栄養を与え、子供を育て、子孫を維持するための重要な器官である。
 女性の乳房にはもう一つ大事な役割がある。他の哺乳動物は、単に子供に栄養を与えるだけの器官であるのに対して、人間の場合は、雄性に対して私は女よ、魅力的でしょうとセックスアピールしているのである。
 乳房は脂肪と乳腺からなっており、その90㌫は脂肪であり、乳腺はわずか10㌫でしかない。だから、女性の乳房は柔らかく、雄性を惹きつけるのである。
 乳がんは、昭和50年(一九七五)頃までは、そう多い病気ではなかった。
 ところが、昭和50年を100とした場合、平成17年(二〇〇五)には約5倍(国立がんセンターがん対策情報センター)と、この30年間に急激に増えている。
 何故、こんなに増えたのであろうか。
 もう一つ、ここにある統計がある。
 それは、出生率の統計である。
 昭和49年(一九七四)の第2次ベビーブームを頂点に、昭和50年以降、平成17年(二〇〇五)の約30年間に出生率が半減(厚生労働省)してしまった。
 しかも、初婚年齢は昭和50年が24・7歳であったのに対して、平成17年には28歳と晩婚化してきている。
 当然のことながら、第1子の出産年齢も25・7歳から、29・1歳(厚生労働省)と遅くなっている。
 また、結婚しない女性も増えている。
 乳がんと、出生率と、晩婚化と、結婚しないことと何の関係があるの?誰でもそう思うであろう。
 乳房の90㌫は脂肪であるから、脂肪ががんになることはない。乳がんは乳腺にできるがんである。
 実のところ、何故乳がんになるのかはっきりわかっていない。が、女性であるという特性と関係があるだろうといわれている。
 つまり女性は、子供を産み育てるという、種保存の重要な役割をになっている。
 女性が結婚しない、あるいは子供を産まないということは、その役割を放棄するということになる。
 女性は、子孫を残すために、卵巣から月1回排卵する。
 このとき、卵子と同時に女性ホルモンの一種である卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌する。
 この二つのホルモンは、子宮内膜に作用して、受精した卵子が着床しやすいように子宮内膜を厚くする。
 受精しない場合には、その厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、体外に排出される。これが月経である。
 受胎しない場合は、これが繰り返されるために、エストロゲンが多く分泌されることになる。
 乳がんにかかる女性は、高齢出産や子どもを産まない女性、あるいは肥満女性に多いことから、このエストロゲンが作用しているのではないかといわれている。
 したがって、乳がんの一番の予防は、結婚して子供を産んで、子供におっぱいを吸わせる、女性本来の目的を遂行することである。

 女性の乳房の9割は脂肪であり、乳腺はわずか1割に過ぎない。だから女性の乳房は柔らかく男性を惹き付けるのである

 

 子宮
 

sikyu-.jpg子宮は、厚さ1㌢もある平滑筋でできた丈夫な袋で、子供が体外にでるまで子供を保護し、育てる器官である。
 子宮の両側に二つの卵巣があり、成熟した卵子が、卵巣から交互に卵管に送られる。ここで精子と出会うと受精ということになる。
 と、同時に卵巣で女性ホルモンがつくられている。
 女性は個人差はあるものの50歳前後で閉経する。
 なぜ閉経するかというと、女性は生まれたときすでに卵巣の中に何十万個という未成熟な卵子を持っており、その中から選ばれた約500個ほどが成長し排卵される。それが無くなると排卵が終わり、同時に女性ホルモンも作られなくなり、女性としての子供を産むという基本的な機能が失われる。それが閉経である。
 子宮がんの、80~90㌫が子宮頸がんである。
 子宮頸がんのほぼ100㌫が、ヒトパピローマウイルス(HPV)の、長期間の感染によるものである。
 したがって、原因がはっきりしているので、HPVワクチンを接種することでがんの発症を未然に防ぐことができる。
 子宮頸がんは近年、性交開始年齢の低年齢化などにより、20代にも子宮頸がんが増加している。性交経験のある女性の全てに感染の可能性があるが、妊娠回数や出産回数が多い女性、不特定多数の性行為などは、子宮頸がんのリスクが高まり、要注意である。

 子宮は、厚さ1㌢もある平滑筋できた丈夫な袋である。まさに御袋である。子供が体外にるまで、子供を保護し育てる大切な器官である


 男性の前立腺がんでの死亡率が、肝臓がん、すい臓がんに次いで第6位と、以外に高い。
 前立腺?、男性諸君で、前立腺とはこうこうこういう役割を果たす器官であると、答えられる人は何人いるであろうか。
 健康な男性は、成人になると、この前立腺に大変お世話になっているにも関わらず、痛くも痒くもなく、全く意識されない器官だからである。
 しかし、50歳を過ぎたころになると、おしっこの出が悪くなった、残尿感ある、あるいは終わったと思ってしまったら、またタラタラとおしっこが出てきてズボンを濡らしてしまった、などの症状が出て病院に行くと、ほとんどが〈前立腺肥大〉ですとの診察が下される。
 多くの男性は、そこで初めて〈前立腺〉という言葉を聞くであろう。
 男性は、50代~60代は40~50㌫。70~80代は80㌫以上が前立腺肥大になり、その何㌫かががん化するという、加齢に伴う男性特有の病気である。
 それでは、前立腺はどこにあり、どんな役割を果たす器官であろうか。
 私は、健康な男性が成人になると大変お世話になる器官と書いた。
 比喩的にいうなら、睾丸でつくられた精子を、女性の子宮まで届け、精子と卵子の恋の橋渡しをする、キューピットのような役割を果たす精液の一部をつくる器官である、とでもいおうか。
 まず、睾丸で精子がつくられる。それが精管を通って一旦精嚢に蓄えられる。精嚢からは精嚢液が分泌されている。
 精嚢の下に前立腺があり、ここで白濁した粘り気のあるアルカリ性の前立腺液がつくられている。前立腺液には、精子を元気にさせ、活性化させる成分が含まれている。
 そして、射精するとき、精子が前立腺から出る前立腺液をプラスして、元気になって勢い良くペニスの先から放出される。
 ところが、加齢にしたがって、睾丸の働きも、精嚢の働きも、前立腺の働きも衰えてくる。要するに男性としての機能が衰えてくるのである。
 何故、前立腺が肥大するのかということについては、まだはっきりとわかっていないが、50歳以上の男性に多いことから、ホルモンのバランスの崩れが原因であろうといわれている。
 前立腺肥大の症状には3段階があり、初期の第1段階は、トイレに立ってすぐおしっこが出ず、30秒ぐらいも待っているひと。これは、一緒にトイレに立ってみると、あ、このひと前立腺肥大だなとすぐわかる。
 第2期は、おしっこが終わっても残尿感があり、終わったと思ってしまったらあとでタラタラとおしっこが出てくるひと。これは本人でないとわからない。
 第3期は、おしっこが出ないために膀胱が拡張し、腎臓が機能障害を起こし、ひどいときには尿毒症になる場合もある。
 私の知っているひとで、尿道に膀胱まで管を通して、外の袋に管でおしっこを出しているひとがいた。これが第3期の症状である。
 困ったことに、精液を対外に排出する器官と、この尿を排出する器官は、本来は全く関係のない器官であるにもかかわらず、女性と合体して子孫を残さなければならないという男性の機能上、ペニスという同じ器官を使っている。
 ということから、尿道も前立腺の中を通り、前立腺の中で精液を運ぶ精管と合流し、1本の管としてペニスの先に出ている。
 このように、尿道も前立腺の中を通っているために、前立腺が肥大することによって尿道が圧迫され、尿が出にくくなるというわけである。
 これが前立腺肥大である。
 私は、現在70歳(昭和17年2月10日誕生)。私も60歳を過ぎたころ、ご多分にもれず、やはり前立腺肥大になり、残尿感や、終わったと思いしまったところ、あとからおしっこがタラタラと漏れ、ズボンを濡らし、困ったことがあった。
 つまり、第2期の前立腺肥大までなったのである。
 これを私は、病院にも行かず、薬も使わず、あることをして治してしまった。
 これは、アンチエイジングに関わることなので、後に紹介しよう。

zenritusen.jpg 睾丸でつくられた精子①が、精管③を通って、一旦精嚢④に蓄えられ、前立腺⑤でつくられた前立腺液と共に、尿道を通って精液として射精される。一方、膀胱に溜まった尿を排出する尿道⑥も、前立腺の中で精管と一緒になっている。男性が高齢になると、精子をつくる量も、精液をつくる量も衰える。そうするとホルモンのバランスが崩れ、前立腺肥大となって現れる。前立腺が肥大すると尿道が圧迫され尿の出が悪くなるというわけである。

 日本人の死因のトップは悪性新生物、つまりがんである。
 そのがんの中で、男性の第一位は肺ガンである。以下、胃がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、前立腺がん、血液のがんである白血病と続く。
 女性の第一位は大腸がんで、以下、肺がん、胃がん、乳がん、肝臓がん、子宮がん、卵巣がんと続く。
 男性と女性では、性の違いから、がんになる部位がちょっと違うが、いずれにしてもがんは死亡率の第一位であることに変わりはない。
 いくら見た目が若くても、筋骨隆々でも、病気になるとアンチエイジングにはならない。
 アンチエイジングで一番大切なことは、病気にならず、健康で長生きすることである。
 そのためには、死因の一番多いがんでいえば、その臓器がどんな役割を果たしているのかを知ることが大切である。
 そのことによって、その臓器が有効に働き、がんにならないような生き方をすればいいのである。
 さて、すい臓がんでの死亡率は、男性のがんの死亡率の第五位と意外に高い。
 人間は、アフリカで誕生して現在までの凡そ700万年の間、その99・99999...㌫は飢餓の中で生きてきた。
 日本でいえば、食生活が豊かになり、国民が飢えずに何とか食えるようになったのは、戦後のわずか60数年間だけである。
 飢えると、人間の身体は体内に貯蔵されているグリコーゲンや筋タンパク、脂肪などを総動員して、エネルギーの不足分を補うなど、飢餓に対応する機能が備わっている。
 水さえあれば、食物を摂らなくても一週間や10日、あるいはそれ以上生きて行ける。
 が、逆に栄養を必要以上に摂った場合に、身体を守る機能はすい臓でつくられるインスリンのみである。
 しかし、糖尿病になると、インスリンの分泌が少なくなる、あるいはインスリンの働きが悪くなる。そのために、血液の中にグルコース(ブドウ糖)の濃度が高くなる。
 かつて糖尿病は、極一部の権力者や裕福な人たちのみの病気で、庶民にはあまり縁のなかった病気である。
 そのために糖尿病は、贅沢病と呼ばれていた時期もあった。
 ちなみに、昭和40年代の日本の糖尿病患者は、3万人程度しかいなかった。
 それが今では、日本人の糖尿病患者数は約237万人、糖尿病が強く疑われる人及び、糖尿病の可能性が否定できない人など、その予備軍は約2210万人(2007年厚労働省調査)と、40年ちょっとで国民的病気になってしまった。
 成人の4人に1人が糖尿の疑いがあるという。
 あなたの周りでも、聞いて見ると、えっ、あんたも糖尿病!?あんたも!?と意外に多いのに驚くに違いない。
 糖尿病を世界的に見ると、その患者数は、ナント3億6600万人いるという(2011年国際糖尿病連合調査)。
 国別で見ると、そのトップは中国で、以下、インド、アメリカ、ロシア、ブラジルと続き、日本は堂々(?)の第6位である。
 糖尿病は重症になると、失明する糖尿病網膜症、足を切断しなければならなくなる、歌手の村田英雄さんがなった、糖尿病神経障害による閉塞性動脈硬化症などがあるが、それ自体で死ぬことがそう多くはない。
 しかし、脳梗塞、脳卒中、心筋梗塞、感染症など、糖尿病によって引き起こされる病気が多く、それが死につながる場合が多い。
 人間の身体には、前述したように、飢餓に対しての対応する機能が幾つもあるものの、栄養の摂りすぎに対しては、すい臓で作られるインスリンのみである。
 それでは、すい臓はどんな働きをするのであろうか。
 すい臓は、胃と脊椎の間にある長さ15㌢ほどの黄色い臓器である。そのために体表からは触りにくい。
 私の知人が、背中が痛いといってマッサージに通っていた。が、実はすい臓がんで、気がついたときは末期状態であった。
 すい臓には、二つの働きがある。
 一つは、消化液である膵液をつくる。
 この膵液が、すい臓から十二指腸に運ばれ、主にはタンパク質やデンプン、脂肪を分解する。
 二つには、血糖値を調整するホルモン、インスリンとグルカゴンをつくる。
 食べたもののうち、糖質は十二指腸でブドウ糖に分解され、小腸で吸収され、肝臓に運ばれる。ブドウ糖はエネルギー源として、ここから血液に乗って全身の細胞に運ばれる。
 この血液の中のブドウ糖を血糖といい、それがどれくらいあるかを計る基準を血糖値という。
 血液中のそのブドウ糖を調整し、細胞に運ぶ役割を担っているのがインスリンである。
 ところが、糖尿病になると、このインスリンの出る量が少なくなる。あるいはインスリンの働きが悪くなり、ブドウ糖が細胞の中に運ばれなくなる。
 結果として、血液の中のブドウ糖が多くなる。つまり血糖値が高くなる。
 これが糖尿病である。
 飽食時代の現代人にとって重要な臓器、それがすい臓である。

 腸ー十二指腸
 さて、次は腸であるが、腸は、大きくは十二指腸、小腸、大腸に分けられ、それぞれ役割が違う。
 胃で、粥状になった食べたものが、まずこの十二指腸に送られる。
 十二指腸は、長さ約25㌢ほどで、C字状に曲がっている消化管である。
 「十二指腸」のその名の由来は、本来は12インチほどの長さという意味であったが、翻訳者が何を間違ったか指を12本並べた長さであると訳したことから名づけられたともいわれている。
 十二指腸の役割は、胃から送られてきた粥状の食べものを、次の器官である小腸で栄養分が吸収されやすいように、アルカリ性の消化液である胆汁と膵液でもって消化することにある。
 胆嚢でつくられる胆汁は脂肪を分解し、すい臓でつくられる膵液は蛋白質や炭水化物、脂肪などを分解する。

 腸ー小腸
 小腸は身体の中で一番長い器官で、成人で直径約4㌢、長さが7~8㍍あり、その表面積はテニスコート1面分に匹敵する約200平方㍍(約60坪)ある。しかし、お腹の中では腸管筋肉によって3㍍ほどに縮まっている。
 小腸の役割は、主には、
 ①栄養分を消化・吸収する。
 ②水分を吸収する。
である。
 腸管膜には、血管、リンパ管、神経が通っており、その内壁には絨毛が隙間がないほどびっしりと並び、絨毛の先にさらに微絨毛があり、その微絨毛が栄養素を吸収するのである。
 小腸では、栄養素の90㌫が吸収され、吸収された栄養素は肝臓に運ばれる。
 私たちは普段、消化器官の中で、胃までは意識するが、十二指腸や小腸、大腸を意識することはほとんどない。したがって、飲みすぎた、食べ過ぎたなど、胃の健康については意識するが、小腸が具合が悪い。あるいは大腸が具合が悪いなどと意識することが少ないであろう。
 ところが、たとえば小腸の表面積が200平方㍍、テニスコート1面分と、人間の身体の表面積の約5倍もあるように、小腸は単に栄養や水分吸収するだけの器官でない。動物の原点というべき機能を持っている。
 以下、「腸人会議」(山城裕一郎順天堂大学大学院得任教授)によると、まず、精子が卵子に入り込み受精卵ができる。そこから細胞分裂を繰り返し、次第に人間の形が出来てくるわけだが、最初にできる器官が脳でもなければ心臓でもない。腸なのである。その腸の両端が、一方は口になり、一方は肛門になって行くというのである。
 つまり、すべての動物は、栄養素を外部から取り入れなければ生きて行けないし、成長もできない。受精卵から人間になる第一歩は、外部から栄養素を取り入れる器官、腸から始まる。
 自然界には、様々な動物がいる。が、ミミズ、あるいはクラゲやイソギンチャクのように、脳や心臓のない動物はいるが、腸のない動物がいないというのである。
 また、腸の中には数百種類、凡そ100兆個の腸内細菌がいるという。
 これは、人間は約60兆個の細胞でできているといわれているが、それよりはるかに多い腸内細菌が腸の中にいるということである。
 腸には約1億個の神経細胞がある。これは脳に次ぐ神経細胞で、腸は脳から独立しており、第二の脳ともいわれている。
 また、腸には身体全体の免疫細胞の50㌫が集まっており、胃と同じくストレスに非常に敏感である。
 免疫細胞は、簡単にいうと、細菌などの外敵から身を守ってくれる勇猛果敢な戦士である。
 ということから、小腸は単なる栄養と水を吸収するだけの器官ではなく、健康な身体を保つ最も重要な器官の一つである。

 腸ー大腸
 さて、口から入った食べ物が、胃で粥状にこなされ、十二指腸で分解・消化され、小腸で栄養分が吸収され、その残りかすが大腸に送られる。
 大腸の主な役割は、
 ①水分を吸収する。
 ②便をつくる。
ことにある。
 大腸の長さは成人で約1・5㍍。大腸には、盲腸、結腸、直腸があり、水分を絞りとられたかすが、最後は直腸に溜まり、直腸が肛門と直結している。
 日本人のがんでの死亡率の第1位は肺ガン、第2位は胃がん、第3位は大腸がんである。
 が、女性だけみると、実はがんでの死亡率の第1位が大腸がんである。
 これはチョコレートなどの甘いもの、あるいはお菓子などを多く食べる。そして、植物繊維の多い野菜などはあまり食べないことと深い関係がある。
 このことを知っている女性は何人いるであろうか。
 大腸がんは、昭和25年(一九五〇)から右肩上がりにあがり、半世紀の間に3倍以上に増えている。
 これは、野菜を中心とした食生活から、肉を中心とした食生活へと変化したことに、大きな原因があるといわれている。
 つまり、脂肪や動物性蛋白質のとり過ぎである。
 国別の大腸がんの死亡率をみると、世界で最も肉を食べている、世界最大の牧畜国ニュージーランドが大腸がんでの死亡率が世界一高い。がんと食生活の因果関係がはっきりしている。
 アンチエイジングは何より病気をしないことである。私たちは腸の健康についてもっと気を使わなければならない。

 

juunisichou.jpg十二指腸は、すい臓から膵液を、胆嚢から胆汁を取り入れ、食物を・消化する(図は『からだのしくみ辞典』成美堂出版刊より)


 5、胃と腸
 食べたものが、歯で噛み砕かれ、唾液と混ぜ合わされ食道を通って胃に送られる。
 胃では、強い酸性の消化液と平滑筋の蠕動運動によって粥状になり、腸に送られる。
 腸では、栄養分と水分が吸収され、残った固形物が肛門から排便される。
 口から肛門までは、食べたものが通る、約10㍍の一本の道である。
 ここではその中の、胃と腸について紹介しよう。
 胃と腸は、腹いっぱい食ったとか、胃がもたれる、あるいは便秘など、身体の中で日常的に意識される器官である。
 日本人の死亡原因の第1位は悪性新生物、つまりがんで30・3㌫、実に3人に1人ががんで死亡している(平成20年)。
 そのがんの中で死亡率の高いのが肺がん、続いて胃がん、そして大腸がんである。
 ということから、胃と腸を知ることは、胃ガンや大腸がんについて考えることにもなる。

 

 
 まず、胃の大きさであるが、健康な成人で約1・5㍑ぐらいとあまり大きくない。
 しかし、宴会などでは、よくこんなに胃に入るものだと思うほど、飲んで食う。
 私なんか、1~2時間で、ビール大ジョッキ(約1㍑)で4、5杯、つまり1升瓶(1・8㍑)で3本近くは飲む。その他に食べるのである。
 皆さんは焼肉屋でミノを食べたことがあるであろう。あれは牛の胃である。肉厚でかなり歯ごたえがある。歯ごたえがあるのは強靭な筋肉だからである。
 もちろん、牛と人間は違うが、人間の胃も三層の筋肉(平滑筋)と二層の粘膜からなっており、かなりの伸縮性がある。
 胃には次のような働きがある。
 ①食べた食物を胃液と混ぜ合わせ攪拌する。簡単にいうと、セメントを混ぜ合わせるミキサーのようなものである。
 ②食べたものを殺菌する。
私たちは、大腸菌や雑菌などがたくさんついたものを知らずしらずに食べている。
 胃液は、pH1~2・5という塩酸液で、食べたものが胃に入ると、反射的に胃液が分泌される。この強酸胃液で食べたものを殺菌ないし減菌しているのである。
 が、同時に、強酸の胃液から胃の粘膜を守る粘液を出している。
 ③食べたものを一時貯蔵する。
 ④そして、胃で胃液と混ぜ合わせられ粥状になったものを次の段階である十二指腸に送るのである。
 食べたものが、胃にどれくらい滞留しているのだろうか、一般的には2~4時間といわれているが、食べた物によって大きな差がある。
 インターネットの、管理栄養士「ぽっちゃり天使」によると、
 ・水      1時間30分
 ・牛乳     2時間
 ・ビール   1時間15分
 ・ビフテキ  4時間15分
 ・エビ天ぷら 4時間
 ・ご飯      2時間15分
 ・パン      2時間45分
 ・やきいも   2時間
 ・りんご    1時間15分
 ・ほうれん草2時間
などとある。
 しかし、食べるときは、たとえばご飯、肉、野菜、魚など様々混ぜて食べるから、これは一つの目安として考えればいい。
 いずれにしても、炭水化物や野菜などは2時間前後であるのに対して、肉や天ぷらなど蛋白質、あるいは油の多いものはほぼ倍の4時間前後滞留している。
 だから、1日三食の他間食をする人は、常に胃に食物があり、胃に負担をかけているということになる。
 当然のことながら、食べる量が多いと滞留時間も長くなる。
 また、夜遅く食べると、寝ている間も休みなく胃が働いていると同時に、脂肪が吸収されやすく、太る原因にもなる。
 少なくても寝る4時間前は食べない方が良い。
 胃は、焼肉のミノでもわかるように、三層の強靭な平滑筋と二層の粘膜で作られているが、意外にデリケートな器官である。
 それは、ストレスに非常に弱いということである。
 特に、空腹時にストレスをかけると、自律神経のバランスの崩れ、胃に食べ物が入っていないのもかかわらず胃液の分泌が起こる。そして強酸で胃の粘膜を溶かしてしまうのである。これが消化性潰瘍で、神経質でストレスに弱いひとは、特に気をつけた方がよい。 また、暴飲暴食、早食い、喫煙、塩分の多い食事なども胃に負担を与え、胃潰瘍やがんなどのリスクを高めることになる。
 日本人の胃ガンの患者のうち、6割が50歳代~60歳代の男性で占められている。
 これはすべてのがん」にいえることであるが、高齢になってくると胃が萎縮するなど、加齢現象のひとつとしてがんのリスクが高まってくる。

itochou.gif 日本人の一番高い死因で圧倒的に多いのが悪性新生物、つまりガンである。そのガンの中で一番多いのが肺ガン、続いて胃ガン、3番目が大腸ガンである(図は『ドクターアリスが教える長寿の秘密』より)

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文:小笠原カオル
文:小笠原カオル

監修

監修:川村賢司
監修:川村賢司

プロフィール
昭和15年(1940)青森県野辺地町出身。東京医科大学卒業、元北里大学薬学部准教授、医学博士。退職後は、㈱東京科学技術研究所長などを務める。著書に『もっともらしい健康の常識』など多数。

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