実践的アンチエイジング講座

4、肝臓

 酒飲みにとってはちょっと気になる臓器である。
 それは、酒(アルコール)は肝臓で分解される。あるいは、飲みすぎると、肝臓に障害が起こることを知っているからであろう。
 それでは、肝臓がどこにあって、どんな働きをするのといったら、答えられるひとは果たして何人いるであろうか。

 

 肝臓は人体最大の臓器
 肝臓は、肋骨の下、肺と内臓の間にある横隔膜のすぐ下にあり、右上腹部から左上腹部まで及び、左側は小さく、右側は右上腹部の殆んどを占めている。
 その大きさは、男性で約1200㌘、女性で約1000㌘ある人体最大の臓器で、41度と身体の中で最も温度の高い臓器である。
 しかも、肝臓に流れる血液の量が、毎分1㍑~1・8㍑。心臓から拍出される血液の三分の一近い、実に28㌫が流れ込んでいる。
 肝臓は、肝小葉と呼ばれる0・7~2mm3(立方㍉㍍)の六角柱の組織でできており、その1個の肝小葉が約50万個、そしてその中に、約2500億個の肝細胞が入っている。
 さて、肝臓にはどんな機能があるであろうか。

2、肺
 プロスキーヤーの三浦雄一郎が、70歳のとき、世界最高峰のエベレストに登頂した(その後75歳でも登頂)。
 その翌々年に、東京都老人総合研究所が、三浦雄一郎の体力テストを行なった。
 結果、三浦雄一郎のその体力は、20代後半の男性とほぼ同じだというのである。
 さもあろう。そうでなければ標高8848㍍、酸素濃度が平地の三分の一しかない山に登ることはできないだろう。
 そのとき私は、体力とはすなわち筋力、あるいは心臓の強さであろうと思った。
 もちろん筋力も心臓の強さも必要だが、それは違っていた。ナント肺に吸い込む酸素の量が20代後半の男性と同じであったというのである。
 実は、エベレストなど空気の少ない高山に登るとき、血液中酸素の濃度を測るらしい。血中の酸素濃度が少ないと、集中力を欠いたり、頭痛がするなど、非常に危険だという。
 だから肺の酸素を吸い込む能力が大事である。
 なるほど、そうだったのかと私はすぐ納得した。

 一般の健康に関する本を見ると、健康になるには、ああしなさい、こうしなさい、ということは書いているが、それが身体のどの部分に、どのように影響して健康になるのかということを書いている本はあまりない。
 あるいは、様々な健康食品、健康サプリメントにしても同じである。
 健康サプリメントは、血液サラサラやダイエット、目の疲れ、美容など、何百種類という様々なサプリメントが売りに出されている。
 知っている人から勧められたという方も多いに違いない。
 中には、ともかく身体にいいからといわれて買わされたという人もいる。
 健康は命より大切だという言葉を聞いたことがある。これは笑い話かと思ったら、結構まじめな本で、アメリカの医療政策を紹介した『健康のためなら死んでもいい』(藤松忠夫=㈱ゾディアック刊)という本もあった。
 いずれにしても、異常なほどの健康ブームである。
 私の知っている人で、様々なサプリメントに、年間100万円使っているという人がいる。その人の顔を見ると、何故か顔がむくんでいた。
 平成22年(二〇一〇)の日本人の平均寿命が、女性86・39歳で、26年間連続世界第1位となった。男性は79・64歳で、過去最高となり、香港、スイス、イスラエルに次いで世界第4位に伸びた。
 また、100歳以上の人が四万四千四百四十九人(二〇一〇)である。
 これら長生きした人たちは、サプリメントを飲んで長生きしたわけではない。

 私はあと30年、100歳まで仕事をしたいという。
 すると友人の一人は、お前の元気だったら出来るんじゃないという。もう一人の友人は、そんなこといったって、歳をとるとガンにかかるリスクも高くなるわけだし無理無理と、二手に分かれる。
 私は40歳のとき、80歳まで働こう。そのためにはサラリーマンでは駄目だと会社を辞め、80歳まで出来る仕事を探した。それが現在の仕事である。それから約30年、70歳を目前にした私は、酒は年齢にしては人並み以上飲むし、仕事も現役バリバリである。
 平成16年(二〇〇四)に、十和田市民大学で、70歳でエベレストに登頂し、最高齢記録を達成したプロスキーヤーの三浦雄一郎さんを招いた。
 映像を交えたエベレスト登頂の話に、私は感動した。
 ところが、その翌々年(二〇〇六)だったろうか、東京都老人総合研究所で、三浦雄一郎さんと、その父三浦敬三さんの二人の体力テストしたところ、雄一郎さんは20代の若者と同じ体力があり、100歳になっていた父敬三さんの大腿骨の強度は、60歳並であることがわかったと新聞に報道された。
 私はその記事を見て、あ、人間って、努力することによって40歳ぐらい若返ることが出来るんだと思った。
 それじゃ、私も努力して、40歳まで行かなくても、20、30歳ぐらいは若返ろう。そう思って、私は仕事年齢を90歳まで引上げた。
 私は仕事柄、新聞のおくやみ欄には必ず目を通す。
 ちなみに、平成23年(二〇一一)6月7日号の朝日新聞(青森県版)のおくやみ蘭を見ると、最高齢で亡くなった方は97歳、続いて95歳、93歳、92歳と、27人中90歳以上が6人もいた。
 90歳以上ということは、その多くは寿命が尽きた、いわば老衰死であろう。大往生である。
 長寿全国ワースト1の青森県であるが、90歳以上は立派である。
 全国ではどうであろうか。
 今年(二〇一一)4月、京都に住む木村次郎右衛門さんが、113歳で、男性の長寿世界一と認定された。
 女性では、佐賀県に住む長谷川チヨノさんが114歳で日本一、世界第三位の長寿である。
 世界に目を向けてみると、これは過去の記録であるが、男性としての世界最高齢記録は、沖縄県の泉重千代さん(一八六五~一九八六)が120歳。女性の世界最高齢記録はフランスのジャンヌ・カルマンさん(一八七五~一九九七)の122歳である。
 以下、男性も女性も119歳、118歳、117歳と、120歳を越えたひとはいない。
 一般的には、ひとの最大寿命は凡そ120歳とされている。
 他の動物はどうであろうか。
この世に生を受けて、人間は必ず死ぬ。それは、40歳、50歳で死ぬか、80歳、90歳まで生きられるか、あるいは100歳を越えてまで生きられるか。いずれにしても最後は死ぬのである。
 そのとき、どう死ぬか。私は、その人の人生の締めくくり方によって、その人の一生が幸せであったかどうかが決まると思っている。
 若いとき幸せであっても、晩年は必ずしも幸せでなかったという人をたくさん知っている。
 あくまでも願望ではあるが、私は、できれば死の直前まで働き、あるいは活動し、できるだけ家族や社会に迷惑をかけないように死にたいと思っている。
 老後という言葉がある。一般的には定年後、つまり退職して年金暮らしになった以後の人生を指して使われる場合が多い。
 老後について、私はこう思っている。
 たとえ、80歳になろうが90歳になろうが、働くなり、様々な社会的活動、あるいは研究をしているうちは、つまり社会の一員として働き、活動しているうちは現役である。
 まさに生涯現役。何歳であろうが、現役であるうちは老後ではない。
 私の祖父は満83歳で亡くなった。60歳代で目が白内障になり、薄ぼんやりとしか見えなくなったので、主な仕事は留守番であった。しかし、毎日ラジオを聴いていたので、世の中のことは我家の誰よりも知っていた。
 留守番という仕事ではあったが、ちゃんと用を成していた。
 その祖父が亡くなったのは5月の、ちょうど田植の時期であった。私たちはみな田んぼに行き、祖父は留守番をしていた。お昼近くになったころ、村の人が、「お前方の爺様が倒れた」と知らせに来てくれた。
 それは大変だと慌てて家に戻った。祖父は布団に寝かせられていたが、私たちを見るなり、
 「今、田植の忙しいときに何で帰って来たんだ。早く行って田植しろ」と、逆に怒られてしまった。祖父は、農家にとって田植がどんなに大事か知っていた。
 そして1週間後、田植が終わるのを待っていたかのように、眠るように死んだ。
 私はそのとき、人間は意思の力で死を伸ばすことができるんだなと思った。
 戦後、日本人は年々若くなっているんです。といったら、あなたはどう思いますか。
 私は、昭和17年(一九四二)2月10日生れだから、現在満69歳である。
 私が子供の頃、昭和20年代は、69歳というと、頭髪が薄くなる、あるいは白くなるのは遺伝的な要素が強いのでこれは別にしても、顔に深いシワがあり、いかにもお爺ちゃん、お婆ちゃんであった。中には骨粗鬆症から腰が曲がり、杖をついて歩いている人も結構いた。
 今はどうであろうか。69歳といっても、私はまだ、『少年マガジン』や『少年ジャンプ』、あるいは青年漫画雑誌『モーニング』や『ビッグコミック』を読む若者(??)である。
 あなたの周りにも、70歳、80歳、あるいは90歳になっても元気な人がたくさんいるであろう。
 『「がまん」するから老化する』和田秀樹著(PHP新書刊)によると、長谷川町子の4コマ漫画『サザエさん』の父親、磯野波平の設定年齢は54歳、母親の磯野フネの設定年齢は48歳であるという。
 『サザエさん』が、最初に連載されたのは昭和21年(一九四六)、福岡県にあった『夕刊フクニチ』である。その後、長谷川さんが結婚したため中断していたが、昭和24年(一九四九)に、今度は朝日新聞に連載が再開され、昭和49年(一九七四)まで続いた。
 つまり、昭和21年当時の54歳の親父のイメージは磯野波平であり、48歳の母親のイメージは磯野フネであった。当時の人は誰もそれに違和感を感じなかった。
 現在のイメージからみると、どう見ても磯野波平は70歳以上であり、磯野フネは70歳近い年齢に見える。それでも、俺は70歳だけれどもっと若いよと文句をいう人がいるかも知れない。
 女性に至っては48歳というと、娘盛りをちょっと過ぎた程度というくらい色気があり、若く見える人も多い。
 最近、ピンク・レディが30年ぶりに活動を再開した。二人とも50歳を過ぎているが、まだまだピチピチしている。

文 小笠原カオル・監修 川村 賢司

アンチエイジングとは何であろうか。

 最近本屋に行くと、健康に関する書棚にアンチエイジングという言葉が目につくようになってきた。手元にある『広辞苑』(1991年度版)で調べてみると、「アンチエイジング」という言葉は載っていなかった。ということは、結構新しい言葉であるということであろう。

 私がアンチエイジングという言葉を知ったのは、塩谷伸幸(北里大学名誉教授)著『~一年で一歳若返る~アンチエイジングのすすめ』(幻冬舎刊、第三刷2004年11月発行)であった。

 この本を求めたのは、多分平成17年(2005)頃であろう。この本を読んで、「あ、何だ、俺のしてきたことをアンチエイジングっていうんだ」と思った。

 「アンチ」とは、弁証法で、ある命題に対立する命題のことである。と、いっても、何、それ?ということになる。そんな哲学的な説明は別にして、簡単にいうと「反」とか「非」という意味がある。「エイジング」とは、年齢、あるいは歳をを重ねていくこと、別な言葉でいうと加齢である。アンチエイジングは、この二つの言葉を組み合わせた言葉で、日本では一般的に「坑老化」と訳されている。つまり、老いに抗って若さを保つとでもいおうか。

 人間、いや人間といわず、すべてこの世に生存する生物は、生まれて、生長し、年齢を重ね、やがては老い、必ず死ぬ。それは生物によって、1週間であったり、1年であったり、10年であったり、30年であったり、その生存の長さは生物によってみな違う。
 人間は、どれくらい生きられるかというと、生物学的には120歳まで生きられるという。平成22年(2010)の調査では、100歳を越えた人が44,449人(厚労省)である。昭和38年(1963)に百歳以上の人はわずか153人だけであった。この半世紀近くの間に、100歳を超える人が約300倍近く伸びたことになる。素晴らしいことである。むかしは、「お前100までわしゃ99まで」と、長生きを褒め称え、長生きは幸せの象徴でもあった。

 しかし、現在は長生きをしたために不幸になっている人が、どんなに多いことであろうか。それは、後期高齢者などと、国が75歳以上の高齢者を差別したように、急速な高齢化に国も社会も対応できていないからである。
 が、かといって、国や社会が対応してくれるのを待ってはいられない。この超高齢化社会の中で、否が応でも百近くまで生きなければならない時代がきている。しかし、たとえ百歳まで生きたとしても寝たきりでは意味がないし、幸せな晩年とはいえない。

 この「実践的アンチエイジング講座」は、超高齢化社会の中で、病気もせず、できれば百歳まで、健康で幸せな晩年を迎え、「ぴんぴんころり」と、幸せに死ねるための実践的講座である。

1  2  3

文:小笠原カオル
文:小笠原カオル

監修

監修:川村賢司
監修:川村賢司

プロフィール
昭和15年(1940)青森県野辺地町出身。東京医科大学卒業、元北里大学薬学部准教授、医学博士。退職後は、㈱東京科学技術研究所長などを務める。著書に『もっともらしい健康の常識』など多数。

最近の写真

※写真をクリックすると記事にアクセスできます。

  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2012/07/10-1.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2012/04/post-312.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2012/04/post-312.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2012/04/post-307.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2011/12/post-205.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2011/12/post-184.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2011/09/post-149.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2011/08/post-86.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2011/08/post-86.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2011/07/6.html