カオルのざっくばらん対談

緩和医療、緩和ケアって何だ!!(3)

[カオルのざっくばらん対談]

看取りは日本の文化だ

asinoyosikazu3.jpg 小笠原 今、簡単に人を殺す事件が多いですよね。今先生のお話しを聞いていて、日本では死と向き合う場面が少なくなってきているということも影響しているんじゃないかとフト思いました。
 蘆 野 それはあると思います。
 小笠原 人間は、生まれて必ず死ぬ。生まれたときはお祝いし、家族の絆が深まります。それと、私の母のときもそうだったんですが、死んだときも家族をもう一度結びつけますよね。
 蘆 野 そういう点で看取りというものを皆でもう一度考えなくてはいけない。
 たとえば、ニュージーランド近くの島の人たちは、人が生まれたときは悲しむ。
 何故かというと、この子はこれから色んな試練に立ち向かっていかなければならない。大変な試練を背負って生まれてきた。それは悲しいことであると考えるからです。
 逆に人間が死んだとき、これからもう試練に直面することはない。楽になったということで、皆で盛大にお祝いをする。
 今、日本でも、自宅で看取り、「良かったね。長い間ご苦労様でした」ということもあります。
 息を閉じた後の穏やかな顔、そして息を閉じるまでの過程を、見取りの場に集まった家族や地域の人たちに見てもらい、一緒に学んでもらうことも重要なことと考えています。
 その看取りの場を中央病院では、地域の様々な職種の人と一緒になって支えています。
 その職種の人たちが、地域での看取りに慣れてくると、臨終を迎え家族の相談相手にもなり、家族の不安も少なくなります。
 私たち医者も、看護師も、大学では治すための教育は受けても、看取りの教育を受けていません。だから、本来治すこと以外知らないし、看取り方は知らないのです。
 したがって、医療者に看取りを託すということはおかしなことなのです。
 たとえばがんで亡くなる人は、機能がだんだんに衰えてきますが、これは老衰同じと考えていいでしょう。痛みなどの苦痛がとれ、自宅で看ることができれば、必要なのは、医療ではなくて介護の支援なわけです。

がんの七割は痛みをともなうが、そのほとんどが痛みを取り除くことができる

 小笠原 大変良く分かります。
 私は先生の話を聞くまでは、緩和医療、緩和ケアというのは、がんという病気はものすごく痛みを伴う病気である。そのがんの痛みをとるための医療であるというイメージを持っていたんですが、実際にがんという病気は痛みを伴うものなんですか。
 蘆 野 実際にがんが進行すると、七割の人に痛みが出てくるという統計が出ています。逆に痛みのない人も三割はいることになります。
 痛みがある人は、その痛みをとってしまえば大変楽なんです。そして、その痛みの九割はとることができます。
 たとえば中央病院のがん総合診療部門に、痛みがとれないと受診すると、多くの場合一週間以内に痛みはとれます。
 非常に強い痛みで、痛みが完全にとれない人も一割弱いますが、そういう人でも自宅では痛みがもっと楽になります。
 病院にいると様々な苦痛が出てくるのですが、自宅では苦痛がすごく少ないんです。
 それはわかるでしょう。病院だと、眠れないとか、傍にいつもいる人(たとえば奥さん)がいないとか、いつもいる場所じゃないとか、心が不安定になってきますよね。精神的要素が苦痛を強くするわけです。痛みがあっても楽しいことをやっていると痛みが感じないということもあるのは、この逆に現象です。
 小笠原 それはあります。痛みではないんですけれど、50代のとき過労ぎみになったとき耳鳴りが始まったんですね。医者に行ったら治りませんといわれたんですけれど、仕事をしているときとか、活動をしているとき耳鳴りがしているのを忘れているんですね。多分、痛みもそれと同じじゃないかと思います。
 蘆 野 そういうことです。自宅にいると、痛みをコントロールしやすくなります。ともかく痛みをとればいい。
 ところがその痛みをとるという簡単なことができない。
 小笠原 日本の医者がですか。

日本の多くの医者は痛みのとり方を知らない

 蘆 野 そうです。痛みをとることは簡単なことです。関心がないんです。関心があればすぐ覚えられることです。
 小笠原 それは何故ですか??
 蘆 野 患者が痛みを持っているということを医者が大変なことであると感じないわけです。
 そういうお医者さんに対して、本人も家族も、痛みがとれないものとあきらめ我慢しているわけですが、我慢する必要がないのです。
 小笠原 それは薬ですか。
 蘆 野 モルヒネを含めた医療用麻薬(オピオイド)です。
 中央病院では、各病棟で痛みがとれていない患者の痛みをチェックし、病院全体で痛みで苦しんでいる患者がいないよう監視しています。
 終末期の医療に於いて痛みとの問題が最重要課題であると思っています。痛みがとれてくると、次の段階に入れるんですが、痛みで足踏みしている状況があるわけです。痛みがとれないからずうっと病院に入院したままになっている。
 痛みがとれれば、家族の問題と、介護の問題、今後の生活の問題などが出てくるわけです。