カオルのざっくばらん対談

緩和医療、緩和ケアって何だ!!(4)

[カオルのざっくばらん対談]

がんで痛みがとれれば入院する必要がなくなる

 asinoyosikazu2.jpg蘆野 極端にいうなら、がんで痛みがとれれば入院する必要がなくなるわけです。
 病院では、痛みが取れれば基本的には退院していただくことになります。
 そして、この時点で、介護者がいないとか、私たちでは解決できない問題が表面化してきます。
 私たちが一番困るのは、病気の問題よりも、家族の問題とか、社会的な問題に直面することです。
 逆に、痛みがとれなければ退院を迫られないことで、家族にとって都合のいい場合があるわけです。
 緩和ケアに於いて、痛みを取ることは初歩の初歩で当たり前のことです。
 様々な職種の人々が一緒になって、痛みなど苦痛をとって、その人の生きかたを支える、家族を支えるのが緩和ケアの基本姿勢です。
 小笠原 今、先生がおっしゃったこと、一般の方はわからないですよね。
 蘆野 現実にはがんの痛みで苦しんでいる人は多いので、今、がん対策基本法に基づき、医師たちに痛みの取り方の教育が行なわれています。
 十和田市民は、中央病院を受診するか、当院のがん支援センター相談員に相談してもらえば、痛みがとれて自宅で生活できる環境が保障されています。

緩和ケア病棟を設置

 小笠原 中央病院では最近緩和ケア病棟を設けたということですが、これは看るひとがいないとかで在宅でケアできない人たちのための病棟なんですか。
 蘆野 そうです。痛みなどの苦痛がとれたとしても、自宅でケアして下さいといっても様々な事情で看たくても出来ない家族もいます。あくまでも急性期病棟ですので長期の〃療養〃はできませんが、本人や家族の都合のいいように、自宅と同じ感覚で使ってもらう病床です。
 10床ですが全部個室になっており、16平方㍍が8床、32平方㍍が2床です。
 この他、この病棟には、特殊浴室や、付添家族のための控え室、談話室、調理室、ボランティア室なども備えています。
 小笠原 ということは、在宅で看れないという場合でもケア病棟で受け入れるということができるということですね。
 ひとむかし前までは、がんになると死を宣告されたと同じだ、八割方は死ぬというイメージがあったんですが、最近私の周りを見ていると、がんで胃を全部摘出して元気でいる人が結構いるんですね。
 がんの治療技術も進歩しているんですか。

がんの治癒率は55㌫

 蘆野 今は、がん患者全体では、日本の治癒率は約55㌫になっています。ということは半分は治らないことも事実であるわけです。
 ただ青森県の場合は、相当進行してから見つかる場合が多く、八割方死ぬというのは正しいかも知れないです。
 小笠原 たとえば長野県は沖縄を抜いて平均寿命が全国一ですよね。
 これは元諏訪中央病院長の鎌田實さんらが、歩け運動とか、集団検診などを提唱して、県民に健康に対する意識を高めて来た結果だということがいわれていますよね。
 ある健康調査で、健康に関する本を持っているかというアンケートをとったところ、長野県は確か5冊で、青森県は一冊だったんです。それから、青森県の喫煙率が非常に高く、結果肺がんの率も高い。
 つまり、青森県人は健康に関する意識が低い。それががんの早期発見が遅れているということでしょうね。
 蘆野 そうですね。がんになる人が多くなっていますが、人間ドックや集団検診を受けることで、見つかった瞬間にもう駄目だということは少なくなっています。
 それと、歳をとるとがんの発生率が高くなります。がんが多くなったのは、食生活や生活スタイルの影響もありますが、高齢化社会になったということもあるのです。

 日本一の高度医療を目指して

 小笠原 十和田市中央病院は、日本に12台しかない、がん治療の最先端医療機器が設置されているということですが、具体的にはどういうものなのでしょうか。
 蘆野 トモセラピーと呼び、がんに放射線を集中照射できる高精度放射線治療装置です。
 これは、通常の治療装置に比べ、ピンポイントに照射できること、複雑な形のがんや複数のがん病巣に対応できること、そして正常組織への影響(副作用)が少ないことが特徴です。
 脳腫瘍、頭頚部がん、肺がん、前立腺がんなどが主な治療対称となっています。
 それと今導入したいと思っているのが、がんの画像診断装置、PET(ペット)で、「陽電子放射断層撮影(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)」の略語です。
 がんは体に変化が起きてから見つかることが多く、がん細胞が増殖して大きな塊にならないと発見できませんでした。
 しかし、がん細胞自身が光ってその位置を知らせれば、もっと早い段階で見つけることができます。
 「がん細胞に目印をつける」のがPET検査の特徴です。
 PET検査は、がん細胞が正常細胞に比べて3~8倍のブドウ糖をとりこむ、という性質を利用します。ブドウ糖に似た物質FDOに目印をつけて注射し、しばらくしてから全身をPET装置で撮影します。するとFDOが多く集まるところがわかり、がん発見の手がかりとなります。
 従来のレントゲン(X線)やCT・MRIなどの検査は形からがんを見つけますが、PETはこのように細胞の性質を利用してがんを探しだします。
 がんの位置がわかればそれを狙い撃ちして治療ができるわけです。
 小笠原 それはすごいことですね。
 ということは、そのPETが入れば、十和田市中央病院は、がんの治療では日本の最先端を行くわけですね。
 蘆野 もう一つ最先端を行くのが、看取りのシステムです。
 今、十和田市では進行したがんの方の四分の一は自宅で亡くなっています。この看取りのシステムを全国のモデル地区として紹介できればと思っています。
 今後、地域の皆さんが看取りについて考える機運が高まることを期待しますが、これは一つも文化です。
 小笠原 大変よくわかりました。と同時にいろいろと考えさせられました。
 先ほど先生がおっしゃいましたPOTですか、資金を集めるにふるさと納税という方法もあるそうですから、毎年2月に東京十和田会の総会もありますから、ぜひそこでも呼びかけてみたいと思います。今日はお忙しいところ大変ありがとうございました。