カオルのざっくばらん対談

編集長の新春ざっくばらん対談

[カオルのざっくばらん対談]

大谷真樹(八戸大学・同短大総合研究所教授)小笠原カオル(本社編集長)

青森県を日本の理想郷にしたい

ootanimaki.jpg 生涯顧客をつくる

 小笠原 どうも、しばらくでした。昨年12月4日、新幹線が青森まで開通しました。大宮‐盛岡間が開通したのは昭和57年(一九八二)、バブルの真っ盛りのころでした。それから28年。八戸まで開通したのが平成14年(二〇〇二)、それから8年目にしてようやく青森まで開通した。
 開通したのは嬉しいんですけれど、青森県の本当の良さを売り込むための受け入れ準備が出来ているだろうかというと、私は甚だ疑問なんです。
 先生は、青森県を日本の理想郷にしたいということで、若い起業家を育てる「起業家養成講座」を開校しているわけですけれど、まずその可能性についてお聞きしたいと思います。
 大谷 私は神奈川県の藤沢市にいるんです。JR藤沢駅を通るわけですけれど、あっちもこっちも青森だらけです。青森のポスター、青森のチケット、青森のキャンペーン、青森の放送、もう一日中青森だらけです。
 これは藤沢に限らず、東京駅に行っても、上野駅に行っても、青森のキャンペーンです。旅行会社のポスターもチラシも皆青森だらけ。
 これから、九州新幹線が鹿児島まで開通したなら、やはり同じことになるでしょうね。
 新幹線に乗ると、大人の休日クラブという安いチケットなんかありますから、ほぼ満席ですよね。でも、これは一過性です。何故かというと、キャンペーンで来るお客さんというのは、キャンペーンだから来るんです。これらの人たちは、安さとかイベントに引かれて来る人たちなんですね。
 八戸も開業のときはワッと客が来たんですけれど、ワッといなくなった。あれと同じ現象なんですね。
 本当に青森を好きなお客さんをつくってゆく。そういうお客さんに青森の良さをアピールして、1回ではなく、2回、3回、あるいは毎年来ていただく。つまり生涯顧客をつくっていかなければならない。そういう戦略を考えなければならない。
 そうなると、安さとか、日帰りではなく、観光資源であったり、温泉であったり、自然であったり、それらを通した健康増進であったりと、それを理解してもらうお客さんを掘り起こしてゆかなければならない。
 やっとインフラは整いました。確かに東京から3時間で来ることができます。それは始めの一歩です。利便性だけでは生涯顧客をつくることが出来ません。ですから、これからが勝負だと思っています。
 小笠原 利便性というのは、JRなり観光業者がつくったものであり、私たちがつくったものではない。
 大事なのは、今先生がおっしゃった生涯顧客をどうつくるかですよね。それが、我々がやらなければならないことである。
 これから日本は、人類が経験したことのないほどの長寿社会を迎えます。
 ちょっと休みたいな。リフレッシュするに青森県に行って来ようか。要するに癒しの場ですよね。
 大谷 そうなんですね。安らぎの場であったり、リセットする場であったり、年に何回か行ってホッとする場所になってゆかなければならない。
 これは、たとえば首都圏に近い箱根や那須では出来ないんです。何故なら、近すぎるからです。便利過ぎるからです。
 僕らは東京で働いて、リフレッシュするのに熱海に行きますか。熱海に行ったら逆に疲れるだけです。宴会に行くならいいんですけれどね(笑い)。
 本当に一人になりたいとか、家族とゆっくりしたいとなったら、むしろ不便さを楽しみたい。これからは、不便なところに行けるようなゆとりを持ちたいというのが目標になります。
 僕たちが子供のころの憧れはハワイでした。
 同じような感覚で、カミさんとのんびりしたいねというときは、軽井沢に行こうとか、青森に行こうということにならなければならない。
 セカンドライフは青森にしたいねとか、青森に別荘なり、小さな家を建てる人が出てくると本物だと思います。

便利さ不便さ

 小笠原 その不便さですけれども、私はどうしても駅を降りてからの2次交通を考えてしまうんですね。
 たとえば私は、どんぐりの森・山楽校という、大人と子どもの自然塾をやっているんですが、七戸十和田駅を降りて、目的地に行くには、タクシーかレンタカーを使わなければならない。
 これも不便さの一つですか。それともここは何とかしなければならないですか。
 大谷 むずかしいところですね。この前も新幹線は満員でも、蔦温泉はガラガラでした。浅虫は満員でした。それは在来線があるからですよね。
 確かにそれでワッとお客は来るんですけれど、ツアーであったり、チケットと一緒の宿泊券ですから、一泊4000円とか5000円と、来るお客の単価が低いんですね。
 それでは、受け入れても疲れるだけですよね。
 むしろ、タクシーでもレンタカーでも、来られる人たちをきっちり受け入れる受け皿をつくって、ゆっくりしてもらう方がトータルでの経済効果が高いです。
 小笠原 長期的にみれば、移動の不便さより、そこに何があるかということの方が大事ということになりますか。
 大谷 冬は、さらに不便になりますからしょうがないということもありますけれど、どうしても行きたいと思う人は、レンタカーでも来ると思います。
 岩手県の湯川温泉だったかな、この前行ってきたんですけれど、ここに10部屋ぐらいの高級旅館があるんですけれど、昨年オープンしてからずうっと満室です。
 川沿いで、静なんですが、すっごい山の中ですよ。宿泊料も高いんです。でも満室なんです。そういう豊かさを求める人たちがいる。
 不便だから人が来ないということはないです。
 小笠原 そうですね。やっぱり大事なことは、そこに何があるかですよね。
 実は、八甲田の麓、湯ノ平に約60町歩(60㌶)のブナの二次林がありまして、ここを癒しの森にしようという計画が今進んでいるんです。ブナの二次林はきれいですね。

癒しの森ブナの二次林

 bunano.jpg大谷 蔦から谷地に行く途中、あれもブナの二次林でしょう。あれを見ていて芸術だなと思いますよ。四季折々も好きですけれど、特に僕が好きなのは、雪が溶けてすぐ、緑の新芽が出始めるでしょう。
 小笠原 根元にはまだ雪が残っていてね。
 大谷 そうそう。エネルギーを感じますよね。生きてるなと思いますね。あれを見ると、都会でストレスで心が病んでいる人たちは、多分希望を感じると思うんです。すごい癒し効果がありますよね。
 馬は、ホースセラピーという言葉があるくらいですから、馬に触っただけで癒されるわけでしょう。
 さらに馬に乗って、ブナの二次林の中を歩いたら、絶対人間性を回復しますよ。
 小笠原 馬でのトレッキングですね。実は私、ブナの二次林で、昨年2回ほど馬でのトレッキングをしました。最高でした。 
 大谷 そういう人間性を回復するメッセージを出して行ったらいいですよね。そうすると季節が関係ないですからね。
 新緑がいい、紅葉いいというと、そのときしか来ない。
 目的が違う。青森に行く理由が変って来る。健康とか、癒しであれば、週末でもいいし、年中自分が行きたいときに行けばいい。
 小笠原 そうです。今のところ湯ノ平に冬は行けないですけれど、でも除雪は以外に簡単なんですよ。谷地側の上から除雪すればいいいんです。
 私も昨年乗ったんですけれど、あの牧場でスノーモービル乗ったら最高ですよ。牧場ですから、障害物がない。しかも高田大岳が目の前に見える。最高ですね。そして冷えた体はすぐ、蔦なり谷地温泉で温めることができる。
 ですから、焼山、湯ノ平周辺は、冬でも結構楽しむことができます。

観光の国際化図れ

 大谷 それと、ノースビレッジが作った歩くスキーとかね。天気次第ですけれど、冬こそ、他では体験できない楽しみがあるんじゃないですか。八甲田がきれいに見えますからね。青森県はいい財産を持っていますよ。
 で、僕はね、これからやるべきことは観光の国際化ですよ。
 今、話したような観光資源を一番理解するのは、団体旅行客ではなく、富裕層というか、ゆとりのある人、つまり、時間も、お金も、考え方もゆとりある人を連れて来なければならない。首都圏もいいですが、首都圏は皆一所懸命にやっているでしょう。これから目を向けるのが香港ですよ。今、青森から羽田経由香港行きというチケットがちゃんと売っているんです。そこに皆はまだ気づいていない。
 三村知事も台湾とか韓国にセールスに行っている。違うんです。香港に行くべきです。香港には雪がないですから、雪の青森の冬をアピールすべきです。
 小笠原 実は1月末にも、グリーンツーリズムということで台湾から中学生が二泊三日で訪れたんです。これは農家で宿泊して、農作業とか雪遊びなど様々な体験をして帰ったんですが、大人を受け入れる体制はまだ出来ていないのかなと思うんですけれど。
 大谷 ゴルフ場もある。温泉がある。大人の場合は体験よりも、美味しいものを食って、ゴルフして、馬に乗って、それでいいんですよ。
 香港は雪がないでしょう。冬は逆に有利で、スキー、ソリ体験、それだけでも充分なんです。
 小笠原 そうすると、そういうプログラムをこちらで組むということですか。
 大谷 いや駄目です。お金持ちはパッケージ化されると逆に来ないです。
 お金を払うから個人行動にしてくれというんです。
 小笠原 そうすれば、それをどこでやればいいんですか。
 大谷 青森空港で、そういう個人旅行を受け入れる、ランドオペレーター(現地手配)というんですけれど、それが必要ですね。
 極端な話をすると、青森空港からヘリコプターで大間にマグロを食いに行きたいという場合、それを手配するとかね。中国や香港にそんなお金持ちもいるんですよ。
 小笠原 そんな方たちがどんどん青森県に来るようになったらすごいですね。
 そういうランドオペレーターの起業家を育てる。それも、先生の起業家養成講座の一つの目標になりますね。

英語で発信しよう

 大谷 今はいないですけども、そのうちに出ると思いますね。
 たとえば、東京で旅行会社に勤めていた人が帰って来て、ヘリコプターの手配は別にしても、通訳ができる人を社員として抱える必要がないんで、登録して置く。また、リムジンでなくていいからタクシー会社と契約して、黒塗りのハイヤーを回してもらうとかして、こういうことが出来ますと、香港や中国に発信する。
 小笠原 そういう点では私も会員ですけれども、十和田市には国際交流協会ってあるんですね。ここには、十和田市在住の外国人や、また日本人でも英語が堪能な人たちもたくさんいます。
 大谷 ですからね、行政がやるべきことは、香港にアピールするとか、外国人の受け皿の会社をサポートするとか、その方が経済効果が高いです。
 そのためにはまず、海外の検索や、メディアのリサーチに引っかかるようにコンテンツを英文化しなければならない。
 県とか色んなホームページを見ると全部日本語ですよ。最低は英語ですよ。出来ればハングル語、中国語、この辺の言語にするだけで、相手が勝手に調べてくれますからね。
 この前、山梨県が武田信玄の祭りをホームページに英語で説明を書いたんです。そうしたら、アメリカのABCがスタッフ50人を連れて取材に来たんですよ。
 小笠原 それはすごいですね。
 青森県って、特に観光面では全国、あるいは世界に発信できるニュースが結構多いんですよね。
 世界に発信できる内容であれば、行政なんかでも英語での説明も必要ですね。
 大谷 そうですよ。今は英語ができる人がたくさんいると思うんです。そういう人を活用すればいいんですよ。
 小笠原 そうですよね。観光は。これからは首都圏に限らず、世界に発信しなければならない。
 先生とのお話しで、青森県の未来が見えてきたような感じがします。ありがとうございました。 

 大谷真樹/昭和36年(1961)八戸市に生まれる。父が転勤族であったことから、父の転勤に伴い、学校も、岡三沢小、三沢一中、三本木高校を経て、五所川原高校を卒業。学習院大学からNEC(日本電気)に入り、コンピューター関係の仕事に携わる。しかし、サラリーマンには飽き足らず、平成9年(1997)に、インターネットを使ったマーケッテングリサーチ会社㈱インフォプラントを設立。これが大当たりした。いわばIT成功者の一人である。
 現在は、若い起業家を育てる「起業家養成講座」を開設。100人の起業家を育て、青森県を理想郷にしたいと活動している。