実践的アンチエイジング講座

6、身体を知ろう(2) 肺、心臓

[実践的アンチエイジング講座]

2、肺
 プロスキーヤーの三浦雄一郎が、70歳のとき、世界最高峰のエベレストに登頂した(その後75歳でも登頂)。
 その翌々年に、東京都老人総合研究所が、三浦雄一郎の体力テストを行なった。
 結果、三浦雄一郎のその体力は、20代後半の男性とほぼ同じだというのである。
 さもあろう。そうでなければ標高8848㍍、酸素濃度が平地の三分の一しかない山に登ることはできないだろう。
 そのとき私は、体力とはすなわち筋力、あるいは心臓の強さであろうと思った。
 もちろん筋力も心臓の強さも必要だが、それは違っていた。ナント肺に吸い込む酸素の量が20代後半の男性と同じであったというのである。
 実は、エベレストなど空気の少ない高山に登るとき、血液中酸素の濃度を測るらしい。血中の酸素濃度が少ないと、集中力を欠いたり、頭痛がするなど、非常に危険だという。
 だから肺の酸素を吸い込む能力が大事である。
 なるほど、そうだったのかと私はすぐ納得した。

 私が20代のころ、長唄をやっていたことがある。
 その長唄をやっているとき、あることに気がついた。長唄の先生は皆元気なのである。80歳になっても腹の底から朗々と声を出していた。
 長唄は3年ほどでやめたので、そのことをすっかり忘れていたが、三浦雄一郎の記事を見て、そういうことだったのかと、むかしを思い出したのであった。
 歌は、オペラでも、日本の長唄でも民謡でもすべて腹式呼吸で発声している。
 つまり、肺の中にたくさんの空気、酸素を吸い込んでいるのである。
 それが、長唄の先生の健康の源であることがわかった。
 このように肺の健康は、若さ、あるいはアンチエイジングにとって、重要な役割を果たしている。
 肺は、心臓を挟んで左右に一つづつ、これも二つある。
 肺は、簡単にいうと、吸い込んだ酸素を血液に供給すると共に、エネルギーを燃やした廃棄物である二酸化炭素を血液の中から取り出し、体外に排出する、いわばガス交換の機能を果たしている。
 ガス交換は、呼吸気管支の末端にある、直径0・14㍉程度の、極小の泡のような肺胞で行なわれている。
 肺胞は、両肺併せおおよそ6億個あり、その表面積は畳30~40枚分(約80㎡)もあるという。
 タバコを吸う人や高齢になると、この肺胞の働きが悪くなり、ガス交換の能力が落ち、体内に酸素を含んだ血液が充分に行き届かなくなる。
 こうなると、ちょっと動いただけで息切れしたり、疲れやすくなる。
 三浦雄一郎や長唄の先生の肺は、酸素が肺胞の末端まで充分に届き、その吸う量が、20代後半の若者と同じであったということである。
 『ドクターアリスが教える長寿の秘密』の「肺」編で、喫煙歴15年のリサに、肺がんの手術を、モニターを通して見せる場面がある。
 切除した肺がんの患部は、肺胞にタールが詰まりどす黒くなり、がん化したところが硬くなっていた。
 これを見せられたリサはもうタバコは吸いませんと自分に誓った。

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 肺は、心臓を挟んで両側にある。肺は、簡単にいうと、吸い込んだ酸素を血液に供給すると共に、心臓から送られてきた汚れた血液から二酸化炭素を取り出し体外に排出する、いわばガス交換の機能を果たしている。肺の断面図(『からだのしくみ辞典』(浅野伍朗監修)成美堂出版より

3、心臓
 心臓は、子どもでも知っている、一番良く知られている臓器である。
 心臓はまた、ここは会社の心臓部である。あるいは心臓が強い、毛の生えた心臓、「もう心臓がドキドキだワ」など、様々な例えに使われる場合も多い。
 心臓は、胸のほぼ中央に位置し、左側がやや大きく、握りこぶし大の臓器である。
 心臓の役割は、一にも二にも、心筋の収縮と拡張によって、血液を全身に送り届けるポンプである。
 心臓は、まず強力なポンプ(心筋)でもって、大動脈というホースを使って血液を全身に送り、細胞のすみずみまで酸素と栄養分を届ける。
 一方、細胞でエネルギーを燃焼し、そこから出た二酸化炭素を含んだ汚れた血液を、大静脈によって回収。それを肺に送りガス交換。その酸素を充分に含んだきれいな血液を心臓に送り、心臓はそれを全身に送る。
 これが生まれてから死ぬまで、1分1秒、365日、休むことなく動いている。
 送り出した血液のうち、約28㌫は肝臓へ、約23㌫は腎臓へ、約15㌫は脳に送られる。
 こうして1分間に、安静時で約60回ポンプ(心筋)が拍動、その送り出す血液の量は約5㍑である。
 5㍑ということは、1・8㍑(約1升)の瓶2本と、1・5㍑のペットボトル1本の量を、わずか60秒で送り出しているということにある。
 これが運動時には、筋肉が大量の酸素を必要とするため、安静時の20倍、30倍にもなる。
 心臓は、大変な働き者である。ご苦労様です。ありがとうございましたと、頭が下がる思いのする臓器である。

sinzou.gif心臓は胸のほぼ中央に位置し、握りこぶし大の臓器で、左側がやや大きい。心臓の役割は、一にも、二にも、血液を全身に送り届けるポンプである。その量は、1分間に約5㍑。つまり1,8㍑(約1升)2本と1,5㍑のペットボトル1本ぐらいの量を送っていることになる。心臓の断面図(『からだのしくみ辞典』(浅野伍朗監修)成美堂出版より

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文:小笠原カオル
文:小笠原カオル

監修

監修:川村賢司
監修:川村賢司

プロフィール
昭和15年(1940)青森県野辺地町出身。東京医科大学卒業、元北里大学薬学部准教授、医学博士。退職後は、㈱東京科学技術研究所長などを務める。著書に『もっともらしい健康の常識』など多数。

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