実践的アンチエイジング講座

6、身体を知ろう (6)すい臓

[実践的アンチエイジング講座]
 日本人の死因のトップは悪性新生物、つまりがんである。
 そのがんの中で、男性の第一位は肺ガンである。以下、胃がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、前立腺がん、血液のがんである白血病と続く。
 女性の第一位は大腸がんで、以下、肺がん、胃がん、乳がん、肝臓がん、子宮がん、卵巣がんと続く。
 男性と女性では、性の違いから、がんになる部位がちょっと違うが、いずれにしてもがんは死亡率の第一位であることに変わりはない。
 いくら見た目が若くても、筋骨隆々でも、病気になるとアンチエイジングにはならない。
 アンチエイジングで一番大切なことは、病気にならず、健康で長生きすることである。
 そのためには、死因の一番多いがんでいえば、その臓器がどんな役割を果たしているのかを知ることが大切である。
 そのことによって、その臓器が有効に働き、がんにならないような生き方をすればいいのである。
 さて、すい臓がんでの死亡率は、男性のがんの死亡率の第五位と意外に高い。
 人間は、アフリカで誕生して現在までの凡そ700万年の間、その99・99999...㌫は飢餓の中で生きてきた。
 日本でいえば、食生活が豊かになり、国民が飢えずに何とか食えるようになったのは、戦後のわずか60数年間だけである。
 飢えると、人間の身体は体内に貯蔵されているグリコーゲンや筋タンパク、脂肪などを総動員して、エネルギーの不足分を補うなど、飢餓に対応する機能が備わっている。
 水さえあれば、食物を摂らなくても一週間や10日、あるいはそれ以上生きて行ける。
 が、逆に栄養を必要以上に摂った場合に、身体を守る機能はすい臓でつくられるインスリンのみである。
 しかし、糖尿病になると、インスリンの分泌が少なくなる、あるいはインスリンの働きが悪くなる。そのために、血液の中にグルコース(ブドウ糖)の濃度が高くなる。
 かつて糖尿病は、極一部の権力者や裕福な人たちのみの病気で、庶民にはあまり縁のなかった病気である。
 そのために糖尿病は、贅沢病と呼ばれていた時期もあった。
 ちなみに、昭和40年代の日本の糖尿病患者は、3万人程度しかいなかった。
 それが今では、日本人の糖尿病患者数は約237万人、糖尿病が強く疑われる人及び、糖尿病の可能性が否定できない人など、その予備軍は約2210万人(2007年厚労働省調査)と、40年ちょっとで国民的病気になってしまった。
 成人の4人に1人が糖尿の疑いがあるという。
 あなたの周りでも、聞いて見ると、えっ、あんたも糖尿病!?あんたも!?と意外に多いのに驚くに違いない。
 糖尿病を世界的に見ると、その患者数は、ナント3億6600万人いるという(2011年国際糖尿病連合調査)。
 国別で見ると、そのトップは中国で、以下、インド、アメリカ、ロシア、ブラジルと続き、日本は堂々(?)の第6位である。
 糖尿病は重症になると、失明する糖尿病網膜症、足を切断しなければならなくなる、歌手の村田英雄さんがなった、糖尿病神経障害による閉塞性動脈硬化症などがあるが、それ自体で死ぬことがそう多くはない。
 しかし、脳梗塞、脳卒中、心筋梗塞、感染症など、糖尿病によって引き起こされる病気が多く、それが死につながる場合が多い。
 人間の身体には、前述したように、飢餓に対しての対応する機能が幾つもあるものの、栄養の摂りすぎに対しては、すい臓で作られるインスリンのみである。
 それでは、すい臓はどんな働きをするのであろうか。
 すい臓は、胃と脊椎の間にある長さ15㌢ほどの黄色い臓器である。そのために体表からは触りにくい。
 私の知人が、背中が痛いといってマッサージに通っていた。が、実はすい臓がんで、気がついたときは末期状態であった。
 すい臓には、二つの働きがある。
 一つは、消化液である膵液をつくる。
 この膵液が、すい臓から十二指腸に運ばれ、主にはタンパク質やデンプン、脂肪を分解する。
 二つには、血糖値を調整するホルモン、インスリンとグルカゴンをつくる。
 食べたもののうち、糖質は十二指腸でブドウ糖に分解され、小腸で吸収され、肝臓に運ばれる。ブドウ糖はエネルギー源として、ここから血液に乗って全身の細胞に運ばれる。
 この血液の中のブドウ糖を血糖といい、それがどれくらいあるかを計る基準を血糖値という。
 血液中のそのブドウ糖を調整し、細胞に運ぶ役割を担っているのがインスリンである。
 ところが、糖尿病になると、このインスリンの出る量が少なくなる。あるいはインスリンの働きが悪くなり、ブドウ糖が細胞の中に運ばれなくなる。
 結果として、血液の中のブドウ糖が多くなる。つまり血糖値が高くなる。
 これが糖尿病である。
 飽食時代の現代人にとって重要な臓器、それがすい臓である。

文:小笠原カオル
文:小笠原カオル

監修

監修:川村賢司
監修:川村賢司

プロフィール
昭和15年(1940)青森県野辺地町出身。東京医科大学卒業、元北里大学薬学部准教授、医学博士。退職後は、㈱東京科学技術研究所長などを務める。著書に『もっともらしい健康の常識』など多数。

最近の写真

※写真をクリックすると記事にアクセスできます。

  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2012/07/10-1.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2012/04/post-312.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2012/04/post-307.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2011/12/post-205.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2011/12/post-184.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2011/09/post-149.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2011/08/post-86.html
  • http://bunka-sinbun.jp/news-article/2011/07/6.html