編集長のたわごと

へそ曲がり編集長のおもしろ本紹介 1

[編集長のたわごと]

 「へそまがり編集長のおもしろ本紹介」は、ペーパーの人間情報紙「夢追人」で連載していて、結構評判であった。

 が、ペーパーの場合は紙面のスペースが限られており、載せたいニュースが多くなると、どうしても削らざるを得なかった。ということでしばらく中断していたが、ネット新聞で復活することとする。

 さて、最初の紹介は、

『快楽(けらく)Ⅱ~熟年性愛の対価~』 工藤美代子著

 悦びには思わぬリスクがつきまとう。それでも欲しい女たち

keraku.jpg 熟年、あるいは高齢になってからのセックスの問題。これは、私が今書いている「実践的アンチエイジング講座」の、最後の章で書こうと思っているテーマある。

 なぜなら、若さを計る一つの指標が、人間、特に男であればセックスができ、子孫、つまり子供をつくる能力があるかどうかであると、私は思っているからである。

 動物、植物、微生物を含め、地球上のすべての生き物は、誕生し、成長し、子孫を残し、やがて死んでゆく。

 植物であれば、芽を出し、成長し、花を咲かせ、実を成らせ、次世代をつくると死んでゆく。植物は、1年草もあれば、多年草もあり、また樹木のように何百年と生きるものもあるが、いずれにしても次の世代を残して死んでゆく。

 子孫を残す能力のなくなった生物は滅ぶしかない。

 人間であれば、誕生し、成長し、結婚し、子供を産んで、老いて、やがては死んでゆく。

 女性の場合は、凡そ50歳代で閉経し、子供をつくる能力が失われる。

 男性の場合はどうであろうか。

 私は、70歳になろうが、80歳になろうが、勃起して女性を抱き、射精が出来るうちは、生物として若いと思っている。セックスは人間にとってものすごく大事なアンチエイジングである。

 さて、私のアンチエイジング論は別として、工藤美代子さんの『快楽Ⅱ』であるが、これは、女性雑誌『婦人公論』に連載したものをまとめたものである。

 ここに出てくる代表的なカップルは、女性78歳、男性82歳のカップルである。この二人、男性には妻がおり、女性は夫に先立たれ一人身である。

 あるとき、その娘が工藤さんに相談にきた。娘といってももう62歳である。

 その娘がいう。

 「聞いてください、工藤さん。あたしの母は七十八歳にもなるのに男狂いしているんです。娘の旦那が明日も知れぬ病で苦しんでいるというのに、あの女(母親のこと)は夜な夜なに男を家に引き入れているんですよ。最低です」

 母親は、15年ほどまえに夫と死別し、今は82歳の男性と深い仲になっている。困ったことに、その男性を家に引き入れて、娘の隣りの部屋でセックスをし、「イク、イク」とか、女性特有のオーガズムのときの声を出している。

 娘には、それがいやらしくてたまらないのである。

 母親が、娘にお金をくれという。

 男は無一文である。何に使うのというと、バイブレータを買いたいという。

 82歳の男性、さすがに勃たないようで、指でいかせていたらしい。が、女性はそれではもう満足しなくなっていた。

 そうこうしているうちに、母親は、この家は私の家だから売ってマンションに引っ越すという。それは、男性と二人で過ごしたいからである。

 最後には、家を売って、その金を娘と分けて、自分がマンションを買うのであるが...。

 まず、これを読んで感じることは、昔から女性は灰になるまで女性であるといわれてきたが、なるほどと思った。

 それと、男性には妻がいるが、その妻と別れて、この女性と一緒になるかと思いきゃ、男性は82歳である。生きても多分10年前後であろう。そうすると、自分の葬式や亡くなったあとのことを考え離婚せず、通い夫となる。

 女性の大胆さと男のずるさが見えてくる。

 これは、特殊かというとそうでもない。

 読売新聞の「人生案内」欄に、そんな相談がたくさん寄せられている。

 いくつか紹介しよう。

 70代女性/夫がなくなって30年ぶりの恋、娘一家と同居の身、彼にも家庭があるが...。

 60代女性/10歳年下の既婚の恋人ができた。子供たちも「お母さんが幸せなら」と応援してくれている。

 60代後半の女性/不倫で初めて女の喜びを知った。

 70代後半の女性/好きなひとができ付き合っているが、彼がほかの女性と親しげに話していると激しい嫉妬に襲われる。

 などである。

 新聞の人生相談にも、このような相談がたくさん寄せられることは、熟年、あるいは高齢者の恋、セックスはもう特殊なことではなくなっているからであろう。まさに、超高齢化社会を象徴する問題である。

 工藤美代子さんは、そんな女性100人以上を取材し書いている。

 まだ、こんな世界を知らず、そんなことはいやらしいと思っている女性諸氏。この本を読むと人生観が変わるのではないかと思う。

 大切なことは、死ぬまで元気でいること。そのために恋やセックスは、精神的にも、肉体的にも、非常に重要ななアンチエイジングの一つであるということである。

 2011年9月刊、中央公論社刊、定価1500円(税別)