編集長のたわごと

へそ曲がり編集長のおもしろ本紹介 2

[編集長のたわごと]

kyu-badeami-go-.jpg『キューバでアミーゴ!』

 たかのてるこ著

 私がキューバを知ったのは、多分、1962年(S37)のキューバ危機のときであろう。私は20歳、若いころの青春時代の真っ盛りであった(現在私は、70歳の青春時代真っ盛りである)。

 当時私は、東京に出て間もなくのころで、新しいことにすべてに興味があった。

 特に、あの巨大国アメリカの懐にいながら、アメリカと一歩も引かず戦っているカストロは私の英雄であった。

 当時、ソ連がキューバにミサイル基地を建設することを知ったアメリカが、それを阻止するために海上封鎖をし、一触即発の戦争をもしかねない状況であった。

 以後、ずっと忘れていたが、次にキューバを知らされたのが、アメリカ映画『シッコ』である。そこには、世界一といわれるキューバの医療制度が描かれていた。映画に感動し、やはりキューバはすごい。それでも、私のキューバに対する認識はその程度であった。

 エッセイストたかのてるこさんを知ったのが、NHKのラジオである。そのときたかのさんは、『キューバでアミーゴ!』の話をしていた。たかのさんの話が面白く、キューバってそうなんだ。面白そうだ。そう思って本屋に行ったところ、初版が平成18年(2006)、文庫版の初版は平成22年(2010)だったが、在庫はない。さっそく注文した。

 読み始めたら面白いのなんのって。ブータンがGNHを国是としているが、キューバもまぎれもなくGNHの国である。

 さて、『キューバでアミーゴ!』を書こうと思い、医療制度世界一のキューバのGDPがどれくらいだろうと思いネットで調べてたが、出て来ない。国策で出していないのかなと思い必死になって探した。

 ようやく見つけたのが、アメリカの発表で、キューバの月の生活費が15ドルというもの。また、GDPが世界200位にも入らないというものであった。世界最貧国ということであろうか。

 しかし、キューバは国民のほとんどが高校以上を卒業し、識字率が99.8㌫。教育費、医療費がタダの国である。

 ま、それはともかくとして、たかのてるこさんが見たキューバを紹介しよう。

 まず、たかのさんがキューバに惹かれたのは、映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』であったという。

 そこには、92歳の、現役のミュージシャンや、ダンディで粋なおじいちゃんや、歌手としてしても、女としても一生現役!という感じの華やかなおばあちゃんの笑顔が、とてもチャーミングに映し出されていた。

 この映画は、お涙ちょうだいの映画ではないが、たかのさんがこの映画を観て、胸が張り裂けそうになるほど、泣けて泣けて仕方がなかったという。

 ということでキューバに行く。

 まず、街を歩いていて、誰彼となく目が合うと、「ハーイ!」と、ニコニコし皆が手を振ってくる。レストランの前を通ると、中から楽しげな生の音楽が聞こえてくる。

 そんな中、たかのさんは、陽気で若い自転車タクシーの運転手(?)アレクシスと知り合う。彼は、英語ができたからである。

 キューバでも『おしん』が放映されたらしく、『おしん』は大人気だったという。 

 レストランに入った。料理を運んでくるねいちゃんが、店にかかっている音楽にあわせ、くるくると回り踊りながら持ってくる。

 いつのまにか、アレクシスとそのおねいちゃんが踊っている。「てるこ、いっしょにサルサ踊ろうよ!」という。

 「踊ったことないないから無理だよ~!」

 「大丈夫、大丈夫!」

 と、踊れないのを不思議がる。

 こうして一緒に踊るはめに。キューバの人たちはともかく踊りが好き。酒が入ると勿論だが、酒が入らなくても何人か集まるとすぐ踊る、陽気な国民である。

 翌朝、窓の外から聞こえてくる楽しげなざわめきで目が覚めた。どこからか聞こえてくるにぎやかな音楽。

 居ても立ってもいられない気分になって、まちに出る。

 通りをあるいていると、上の方から「ハロ~!」という声がした。ん? どこから? と辺りを見まわすと、目の前の建物の2階から、手に絵筆のようなモノを持った兄ちゃんが手を振っている。そして上がってこういという。

 こうしてたかのてるこさんが、キューバでの13日間の旅をするのだが、なんとも人懐っこくて陽気な国民である。アメリカがいうように、確かに金はない。しかし、浮浪者は一人もいない。

 大橋照枝さんが『幸福立国ブータン』の中で、「GDPは、人間の幸福や福祉にとってマイナスの戦争や自殺や交通事故や離婚や環境破壊などが生じても、金銭的支払いが生じれば、どんどん加算していくので大きくなる」と書いている。

 GDP世界第2位になった中国は、目の前で子供が自動車に轢かれて苦しんでいるのに、見て見ぬふりをして通り過ぎていったという事件があった。GDP世界第3位の日本では、江戸時代の天明の飢饉じゃあるまいし、金がなくて餓死した人が相次いでいる。

 『キューバqでアミーゴ!』は、これは単なる旅行記であるが、その底には、国とは何か、政治とは何かを考えさせてくれる本である。 ぜひ一読をお薦めしたい。

 『キューバqでアミーゴ!』 幻冬社文庫 定価648円。