実践的アンチエイジング講座

11、食生活とアンチエイジング ②

[実践的アンチエイジング講座]
 免疫力と抗酸化力
 前回は、「我が家は長寿の家系?」、「食生活で体質が変わった私の体験」、「裸参り、寒中水泳で風邪をひかない」を書いた。
 最初に、「我が家は長寿の家系?」の秘密を書こう。
 長生きには、確かに長寿の遺伝子もあるらしい。
 平成23年(二〇一一)日本人の平均寿命が女性85・90歳、男性79・44歳である。
 しかし、昭和62年(一九八七)に、女性80・93歳、男性75・23歳で、男女共に世界一の長寿国になって以来、残念ながら女性は26年ぶりに香港に抜かれ第2位に、男性は前年の4位から8位に転落した。これは3・11の東日本大震災の影響だろうといわれている。
 実際にそうなのかどうかは今年(平成25年)の発表を待たなければならない。
 何故なら、男性は昭和62年に世界一になったものの、平成14年(二〇〇二)に香港に抜かれ第2位。さらに第4位と下がり、平成23年に第8位に転落した。
 平成10年(一九九八)に自殺者が3万人を突破したが、その中で男性の自殺者が女性の倍以上である。
 また、悪性新生物(がん)や心疾患(心筋梗塞等)、脳血管疾患(脳卒中等)などの死亡率が、糖尿病患者の増加と相まって、増加傾向にある。これらが男性の平均寿命を引き下げる大きな要因となっている。男性については、もはや世界の最長寿国でなくなった。
 それにしても、昭和22年(一九四七)の日本人の平均寿命は、女性53・96歳、男性50・06歳であった。
 この65年間に、実に女性は31・94歳、男性29・38歳寿命が延びたことになる。
 これは日本人に長寿遺伝子が突然備わったわけではなく、医学の進歩と食生活変化によるものである。
 この日本人の平均寿命が、女性約54歳、男性約50歳の時代に、我が家では80歳前に亡くなったひとがいなかった。
 私はこの『実践的アンチエイジング講座』の書き出しに、我が家の長寿の理由を、①労働、②野菜を中心とした食生活、③ミネラルの豊富な水の三つであったろうと書いた。
 私の子どものころを思い出してみると、トイレはどこの農家でも外便所で、糞尿を肥料として使っていたことから、トイレの下は糞尿を溜める大きな便槽になっており、その便槽の上に厚めの板を張り、糞尿をする穴が開いているだけであった。
 ウンチをすると、夏はポッチャン、ポッチャンと便槽に落ちる。たまに跳ねっ返りがくるときもあった。冬になると糞尿が凍って広がらずに次第に盛り上り山になってくる。
 そのとき家族がどんな便をしているのか、下痢をしているのか、健康であるかがすぐわかる。
 「糞も味噌も一緒」という言葉がある。これは良いものも悪いものも同一に扱うとの例えでいう。
 なぜ、糞も味噌も一緒なのか。むかしのひとの糞は黄色く、味噌と見分けがつかないくらい同じ色をしていた。
 だから、色は味噌と同じでも、味噌と糞と一緒にするなというわけである。
 我が家の家族の糞はみな黄色く、味噌と同じ色をしていた。
 糞は、食べたものによって色が違ってくる。現代人は肉を多く食べるから糞は黒っぽく、また便秘のひとも多い。
 我が家の食事は、米のご飯と、夏は白菜やキャベツの、冬は干菜の味噌汁を基本に、おかずは魚があればご馳走で、春はクレソンやミズ、フキなどの山菜。夏は大根と人参の酢の物、野菜炒め、白菜やきゅうり、赤かぶなどの漬物。あるいはもぎ立てのきゅうりを冷やし、味噌をつけて食べるのが美味しかった。
 冬は、自家製の豆腐、あるいは豆と麹でつくったごどや漬物であった。
 冬も、白菜や大根は、畑に穴を掘り土の中に埋めていたので、結構新鮮な野菜も食べられた。
 これが我が家の食生活であり、それが長寿と多いに関係があるのだ。
 今、糞の話をした。口から食べた物が消化吸収され、排便されるまでおおよそ18時間かかるとされている。だから、1日1回以上便として排出されるのが望ましい。
 もう一度本稿の、「6、身体を知ろう」の「5、胃と腸」の項を思い出していただきたい。
 卵子と精子が合体して受精卵ができる。そこから細胞分裂を繰り返し、人間の形ができてくるわけだが、最初に作られる器官は脳でもなければ心臓でもない。腸なのである。その腸にまず肛門が先でき、それから口ができる。
 そしてこの腸の中には数百種、おおよそ100兆個の腸内細菌がいるという。
 人間の形をつくっている細胞は約60兆個であるから、それよりはるかに多い腸内細菌がいるということになる。
 そしてこの腸内細菌には、いわゆる悪玉菌と善玉菌があるわけだが、腸には身体全体の約50㌫の免疫細胞が集まっているといわれている。
 免疫細胞は、外部からの細菌の侵入を食い止め、身体を守っている。
 ところが、便秘で4日も5日も排便しないとなると、腸は充分な働きをしないどころか、腸内に腐敗菌が繁殖し、免疫細胞をつくれなくなる。
 そうすると、風邪をひきやすい、あるいは様々な病気になりやすい身体になる。
 野菜を多く食べることによって腸がきれいになり、腸の働きが活発となり免疫細胞が多くつくられ、免疫力の強い病気をしない身体がつくられる。これが我が家の長寿の第1の秘密である。
 ひとはなぜ歳をとり、老い死んで行くのだろうか。
 本稿「4、ひとは何歳まで生きられるか」を思い出していただきたい。
 成人の身体は約60兆個の細胞でつくられている。その60兆個の細胞がいつまでも同じではない。常に古い細胞が死に、代わって新しい細胞がつくられている。いわゆる新陳代謝が行なわれている。
 新陳代謝は、皮膚など早いものでは28日、骨などは1年ぐらいと、1年以内に全部の細胞が入れ替わる。
 その新陳代謝は、成長期にはほぼ100㌫入れ替わるが、歳と共に90㌫、80㌫と次第に少なくなってくる。
 歳をとると、頭髪が薄くなり、皺が増え、あるいは身体が縮まってくるのはそのためである。
 また、新陳代謝のとき、細胞が少なくなってゆくだけでなく、細胞の傷がつく場合がある。その細胞を傷つけるのが活性酸素である。傷ついた細胞はがんや様々な病気となって現われる。
 その活性酸素を抑制、あるいは無毒化するのが、野菜など植物性食料にたくさん含まれているプロフェノールやイソフラボン、カテキン、リコピン、ビタミン類といった抗酸化物質である。
 野菜など植物性食料を中心とした食生活は、抗酸化物質をたくさん身体の中に取り入れ、野生動物のような自己治癒力の高い身体をつくる。
 だから高齢になっても病気もせず、若々しく、元気で働いている。これが我が家の長寿の第2の秘密である。

文:小笠原カオル
文:小笠原カオル

監修

監修:川村賢司
監修:川村賢司

プロフィール
昭和15年(1940)青森県野辺地町出身。東京医科大学卒業、元北里大学薬学部准教授、医学博士。退職後は、㈱東京科学技術研究所長などを務める。著書に『もっともらしい健康の常識』など多数。

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