カオルのざっくばらん対談

BUNKA新聞社30周年記念対談 1 (下)

[カオルのざっくばらん対談]

 小林裕志(北里大学名誉教授)小笠原カオル(本社編集長)

 孫世代に循環型社会の構築を

kobayasihirosi.jpg 小笠原 孫世代に負の遺産を残すな。その通りだと思います。それでは具体的にはどうしたらいいんでしょうか。
 小林 私が長くやってきたのは循環保全型農業なんですね。それを、農業だけでなく、社会全体を循環型社会にして行くというのが私のテーマです。循環型社会を構築して行くには、食育という言葉がありますけれど、子どもたちを巻き込んで行かなければならない。
 たとえば十和田市の人口は6万ちょっとです。この6万市民を循環型社会に取り込むということが大事です。取り込むために誰の力が必要かというと、女性、お母さんです。お母さんが身体を張って守るのは子どもなんです。
 福島の原発事故を見てごらん。子どもを放射能から守るために、旦那と別居してまで避難しているお母さん方がたくさんいるでしょう。
 産業には転入型と内発型がありますよね。内発型は地場産業の育成です。地場産業は十和田市の場合は農業です。
 しかし、循環型という観点から見ると、農業と地域の消費社会が結びついていない。
 どうすれば結びつけられるか。農家で採れるお米や野菜を、都会に出荷するのも大事ですが、まず学校給食で100㌫地元の食材を使う。そして残飯が出るでしょう。いわゆる生ゴミです。それを堆肥化して農家に還元する。
 ここで大切なのは、堆肥化できる生ゴミと、そうでないものの分別です。
 この学校教育としてやっていることを、今度は家庭に広げて行く。そして家庭で出る生ゴミも堆肥化して農家に還元して行く。子どもが学校でやっている事ですから、「お母さん生ゴミは堆肥にするんだからちゃんと分別しなければ駄目ですよ」と、子どもにいわれると、大概のお母さんは、「ハイわかった」といいますよね。だから、循環型社会を創出するためには、子どもを巻き込んでいかなければ駄目です。
 小笠原 それって意識の問題ですよね。
 小林 そうです。だからね、ゴミの分別についての正しいノウハウを教育委員が、学校に通達すればいいんですよ。これは行政の仕事です。
 そうすれば学校ではそれを子どもたちに教育する。その教育を受けた子どもたちが家庭に帰って、お母さんがいい加減に分別していると、子どもに注意される。そうすればお母さんも子どもに従います。
 こうして6万人が食べた残飯が肥料になったら、ものすごい量が循環するわけです。
 その有機肥料を使って農家が、低農薬の安全な野菜をつくる。その安全な野菜を最優先に学校、あるいは市民に食べてもらう。これが循環型社会ですよ。
 小笠原 それは江戸時代から昭和30年代まで行なわれていたことでしょう。
 私は、昭和35年(一九六〇)の春、三農を卒業したんですが、学校のトイレから大きな柄杓で糞尿を下肥樽に汲み、担いで畑に運んで肥料として使っていたんです。いやー臭くて大変でしたよ。でも、それが当たり前だった。
 小林 その人糞には面白い話があってね、徳川家康が江戸に幕府を開いたとき、あそこは火山灰地でしたから不毛の地だった。
 しかし、たくさんの人たちが集まってきた。その排泄物が出る。その人糞を使って野菜をつくる様になった。こうして江戸の真ん中で作物が採れるようになった。それが終戦後まで続いた。
 小笠原 今、先生がおっしゃったように、日本には循環型社会のそういう下地があるんですね。
 現在でも、生ゴミまではいっていませんが、プラスチック、カン、ビン、粗大ゴミなど、分別してゴミの収集をやっていますよね。
 ですからこれは意識の問題で、行政なり農協が、生ゴミから堆肥をつくる施設をつくったら、案外出来るんじゃないですか。
 小林 だから意識なんですよ。原発の問題もそうです。私がいつもいっているように、経済はもちろん大事ですよ。しかし、経済より大事なのが生命なんです。
 小笠原 私が、昨年9月号の「へそ曲がり編集長のおもしろ本紹介」で、『給食で死ぬ』という本を紹介したんですが、これはね、いじめ・非行・校内暴力で大変だった学校が、学校給食を日本食に変えたとたんに、それが一切なくなったという実話の記録なんです。
 子どもの将来を考えてもやっぱり一番大切なものは食なんですね。
 それと、沖縄がかつては寿命日本一だったものが、この前の厚生省の発表では、女性が第3位、男性がなんと30位に転落した。沖縄の医師会が慌てているんですね。これはすべて食生活です。
 小林 そうなんです。なんで有機農業がいいかというと、有機野菜にはミネラルがたくさん含まれています。ですから、一番大切なのは、循環型教育です。

 BUNKA新聞社次の30年にアドバイス

kobayasi2.jpg 小笠原 私はおかげ様で30年やってきました。それも小林先生をはじめ、たくさんの方々のアドバイスや教えがあったからこそやってこれたと思っています。
 私はあと30年やって行きたいとの夢を持っています。次の30年に向かっての、BUNKA新聞社の課題はなんでしょうか。
 小林 人間なんのために生きているかというと、最終的は「心身共に、健やかな生活の持続」(上記図)です。そのためにはまずHealth。健康ですよね。医食同源という言葉がありますが、健康の原点は食です。
 二つ目は、Arts,Culture&Sports。芸術、あるいはスポーツを楽しむ。これは心の豊かさの問題です。
 三つ目は、Nature&Ecology、自然との共生ですね。
 これを束ねて、十和田市の地域資源にして行く。それをどのようにして全国発信して行くか。それがBUNKA新聞の仕事ですよ。
 小笠原 あ、そうなんですね。ネット新聞「夢追人」を見ていただければわかりますが、実は、私が30年間やってきて、行き着いたのがそれなんですよ。
 ヘルスでは、現在「実践的アンチエイジング講座」を書いているように、それを追求してました。
 カルチャーは、BUNKA新聞はもともとそこから出発しています。また、スポーツでは十和田の休日乗馬クラブなどを行なっています。
 エコロジーでは、どんぐりの森・山楽校をやり、そして蒼星の森にも参加し、それらを全国に発信しています。
 そのアクセス数がすでに8万件を越え、10万件はもうすぐそこです。今後さらにそれをおう盛に進めて行く。BUNKA新聞の次の30年先が見えてきたような気がします。ありがとうございました。