編集長のたわごと

へそまがり編集長のおもしろ本紹介 6

[編集長のたわごと]

『暴力はどこからきたか 人間性の起源をさぐる』

bouryolkuhadokokarakitaka.jpg 戦争は最大の暴力である。第一次世界大戦での軍人及び民間人を含む戦争での犠牲者は900~1500万人。第二次世界大戦では5000~8000万人。うち日本人は260~310万人(ウィキぺディアフリー百科事典)といわれている。
 人類はこれに懲りてもう二度と戦争はしないかと思うと、戦争の傷も癒えぬ5年後に朝鮮戦争、そしてベトナム戦争、イラク戦争など、相も変わらず戦争から抜けきれないでいる。
 著者の山極寿一氏は人類学・霊長類学者であり、長年ゴリラの研究でアフリカに行って調査をしている。ゴリラは、ウガンダやルワンダ、コンゴ共和国といった紛争地域に多く生息している。
 一九九四年、ザイールとルワンダの国境の町にいた著者が、長い長い列をつくってやってくる難民に出会った。100万人近い人々が虐殺された直後である。どんな悲惨な状況に遭ってきただろうか。人々は裸足で、頭に毛布や食器などわずかな荷物を載せ、無表情で笑いひとつなく、子どもの泣き声さえなくただ黙々と歩いていた。
 平和な時なら学校に行って友だちと楽しく遊んでいるはずの、難民の荷物を調べている銃を重そうに持った一人の少年兵に、山極さんは「どうして戦闘に加わったの」と尋ねた。
 少年兵は、「家族が殺されたからだ」と答えた。
 山極さんはここに人類の戦いの原点があると思った。
 山極さんは、人類学・霊長類学者のこれまでの研究成果を踏まえながら、第一章攻撃性をめぐる神話。第二章食が社会を生んだ。第三章性をめぐる争い。第四章サルはどうやて葛藤を解決しているのかと、四章までは、人類の遠い子孫である霊長類や真猿類、類人猿までの進化の過程を紹介している。ここまでは暴力や同じ種同士の殺し合いはほとんどない。
 そして、第五章は「暴力の自然誌‐子殺しから戦争まで」である。人類が同じ種同士を殺しあう暴力を持ったのは、狩猟から一定地域に定着して農耕をし、家族、集団がつくられ、言葉を持ったところから始まった。
 結局、戦争の論理は、安倍晋三にいわせるまでもなく、家族を守り、民族としての一つの集団、つまり国を守ることである。
 現在も、地球のあっちこっちで紛争がおき、人類は戦争という暴力を克服できないでいる。戦争は人類の永遠の課題であろうか。
 その中で、二度と戦争はしませんと誓った日本国憲法は、人類にとって宝といって言い過ぎではない。
 山極 寿一著(NHK出版刊)  定価970円+税