杉本佳築子物語 夢かぎりなく

23、大型店への挑戦

3、ジャスコ進出に前代未聞の商店街のストライキ(中

 昭和56年(一九八一)5月19日午後3時、十和田市の中心商店街のシャッターが一斉に下された。そして同4時に商店主たちが商工会館の大ホールに結集。大型店進出阻止総決起大会が開かれた。
 以下、その状況を「県南新聞」から紹介しよう。

 大型店待ってくれ
 小売業〃必至〃
〃穂並町商店街は不参加〃
 大型店の進出に反対する十和田市小売商業活動協議会(近藤偉太郎会長)は、予定通り十九日午後三時から〃閉店スト〃に突入、同四時から商工会館で大型店進出阻止決起大会を開いて気勢をあげた。
 稲生町は見事な結束
 十九日午後三時の閉店スト突入を迎えると、国道4号線沿いの各商店は一斉にシャッターを下しはじめた。
 「商店街一斉閉店」というビラをシャッターに張りつけるや、ハチマキ姿で総決起大会の会場である商工会館へ向かった。
 本紙では、午後三時半、国道4号線沿いの商店がどれだけ閉店ストに参加したのか、調査に乗り出した。
 以下、開店していた店名は次の通り。
(として、ストに参加しなかった店名を挙げている)
 以上だが、中心商店街から離れた穂並町の小売店にスト不参加が多く見られた。
 穂並町には衣料品関係の小売店が少ないこと、また食料品にいたっては、松木屋、亀屋の両大型店、あるいはカケモスーパーの進出で挟み撃ちにされた感があり、小売店としてはすでに対抗手段も見い出せない状況下にあり、諦めがスト不参加につながったであろう。
 駅前に近い商店の中には大型店歓迎組もかなりいるのでは―との見方もあったが、ご覧のように数店が開店しているだけだった。
 稲生町一丁目から九丁目の信号間は一〇〇%近い閉店ストをみせたが、これは各商店が、ジャスコ、十鉄の進出を深刻に受けとめ一糸乱れまいとする結束のあらわれであろう。
 七戸町から多数の応援団
 ところで 会場の商工会館ホールは、市長選挙の演説並みの人、人の熱気に包まれた。
 大会は相坂屋の江渡龍博氏の司会ではじまり、南商店街の木村祐直氏がまずもって開会宣言、続いて議長に小原富三氏、副議長に益川昌彦氏、稲本精二氏を選出した。このあと応援に駆けつけた三沢市商工会をはじめ五戸町、十和田湖町、百石町、上北町、下田町、天間林村、七戸町の各商工会の人達が紹介された。
 特にお隣りの七戸町商工会からは大量十五人が決起大会に顔を見せ、気勢をあげた。十鉄、ジャスコの出店には、特に七戸町の商店街が「今でも十和田市にお客が流れているのに、十鉄、ジャスコが出来れば完全にお手上げだ」と語っており、両大型店の出店に対し、十和田市と同様警戒を強めている。
 人口十万人になるまで  待って欲しい 近藤会長
 このあと近藤偉太郎会長が演壇に立ち、次のようにあいさつをした。
 本日の一斉閉店で市民の皆さんに大変ご迷惑をかけました。おわび申し上げます。
 私は十五年前に、十和田市発展のためには小売業だけではダメだ。ある程度の大型店が必要だーと強調したものであります。その比率は十%、いや、人口増加にしたがって十八%位であれば我慢出来るだろう。両者が共存共栄出来まして十和田市発展につながるとみておりました。
 ところがどうでしょう。ジャスコは百万都市の仙台にある丸光デパートと同じ規模のものを建てたいと申請しております。また十鉄は、青森市のカネ長デパートと同じ規模のものを建てたいとであります。これで大体お判りのことと思います。亀屋の四倍~五倍のスケールです。
 売り上げでみますと、我々八二三店の小売業者で二一三億円です。しかし大型店だけで二五〇億円という予想売上でございます。これは小売業者に〃おこぼれ〃もないのです。
 ジャスコと関係している西山製材所の沼畑徳蔵さん、あるいは十鉄の幹部の方々とは何かにつけておつき合いをいただいております。
 しかし、ムチャクチャな出店されたんでは八二三店の小売店、そこに働く従業員と家族を含めると四千五百人に達する。この方々を路頭に迷わせることになる。それではいけない、そんな気持ちで立ち上がったのです。
 このままでは真の共存共栄は出来ません。今こそ行政機関の方々の慎重な対策と決断が必要ではないでしょうか。大型店だけが繁栄して、小売店がつぶされるようでは、十和田市の形態がおかしくなることはハッキリしています。
 今こそ我々の声なき声を大にして、消費者の理解を得たいのであります。
 最後に申し上げます。現在申請している大型店は十和田市が人口十万人になるまで待って欲しいーこう叫びたいのであります。
 最後に、人口十万人になるまで凍結してほしいーと叫ぶと、ハチマキ姿の約六百人の聴衆から割れるような拍手が送られた。
 育てた魚を投網でもっていかれる 松橋玲寿郎氏
 続いて意見発表に入り、トップバッターとして大型店対策委員長の松橋玲寿郎氏が壇上に立った。
 きょうは大型店進出阻止のため、店を閉めてまで参加していただき厚くお礼申し上げます。
 私は商売をはじめて二十七年になりますが、市内には三代~四代の先輩が沢山おります。陰ながら十和田市発展に貢献してきました。
 外部からくる大型店は、地元に何の貢献もせず、今日きて明日根こそぎ持ち去ろうとしているのです。
 我々が一生懸命育てた魚を、投網で一匹残さず持ち去ろうとしているのです。
 一部の人は、大型店がくれば人口が二、三万ふえると申しております。皆さん、昭和三十八年の人口が三万八千人と記憶しております。一万人増えるのに十六年もかかっているのです。しかも、この人口増の最大の原因は北里大学の誘致だと思います。
 今ここで大型店にきてもらいたくありません。今でも売り上げが減っているのです。これ以上売り上げが減ったらどうやって生きていくのですか。皆さん、今こそ我々が団結をし、断固反対していかなければなりません。

 このあと商店街を地盤にした伊藤文雄市議会議員が挨拶をし、決議文を採択し閉会した。