杉本佳築子物語 夢かぎりなく

24、大型店への挑戦

3、ジャスコ進出に前代未聞の商店街のストライキ(下)

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 ジャスコの進出は、近藤偉太郎会長がいっているように、「八二三店の小売業で二一三億円」の売上に対して、「大型店だけで二五〇億円」の予想売上である。「これは小売業に"おこぼれ"もない」ことになる。商店街の危機感もわかる。
 この前代未聞の商店街のストライキをテレビ、新聞は華々しく報道。全国的な話題となった。しかし、消費者を置き去りにしたこのストライキに、東奥日報が「小売店一斉スト 市民に『進出歓迎』の声も」と書いたように、拍手を送る人ばかりではなかった。
 華々しく報道されたその陰で、大型店を誘致する「十和田ショッピングプラザの出店を促進する市民の会」が結成され、署名運動が行われていたのである。
 以下、「県南新聞」5月20日号から紹介しよう。

こちら大型店歓迎派
岡本社長が署名集め
 この、大型店誘致建設を積極的に推進している団体は「十和田ショッピングプラザの出店を促進する市民の会」(岡本久三郎会長)。
 五月一九日の商店一斉ストと阻止総決起大会の行われた日、十和田市、市議会、商工会議所、十和田商調協にそれぞれ六町内会長、八十事業所の署名簿を添付した陳情書を提出し、大型店の開店が早期に実現するよう訴えた。
 本紙インタビューに対して岡本会長は、
 我々はジャスコだけに開店を促進させるものではなく、今商調協に申請中のすべての大型店の開店増床の促進を希望している。会の名称はむしろ大型店誘致建設促進期成同盟とすれば良かったと思っている。
 ......市民の利便性や商圏を広げ市の発展を願うならば、大型店の進出は大いに歓迎すべきだ。現在の十和田市は、青森市、八戸市とくらべまだまだ物価は高く品数も少ないことなどから、両市へ買いものにいく人たちが多いと聞いている。
 当市に大型店が来ることによって、他市へ流出する買い物客の足をとめ、周辺市町村の客足を十和田市に向けさせることが可能となる。......今までの当市の商店はまだ殿様商法的で、購買意欲をかきたてる努力が不足していたのではないか......

 などと語っている。
 岡本さんがいうように八戸、青森と比べると、十和田市に大型店は松木屋デパート、亀屋みなみチェーン、そしてショッピングセンターすぎもとがあったものの、魅力ある店は少なく都市間競争ではかなり劣っていた。
 それだけではない。当時、日曜日に八戸市の中心商店街に行き100㍍ぐらい歩くと、十和田市稲生町の商店主たち3、4人に必ず会った。商売人は土、日が一番の稼ぎどきなのに、この人たちは自分の店を閉めて八戸に買い物に来ているのだろうかと思ったほどである。
 それは別として、商調協も簡単に結論を出せなくなった。7月に行われた商調協では、新たに十鉄とジャスコが加わったことから、審議のための資料が不足してる。これでは審議ができないと審議がストップしてしまった。
 さらに8月に入り、市議会経済常任委員と商工会議所議員との、大型店進出についての懇談会が行われた。これには商工会議所会頭を始め関係者約60名、市議会経済常任委員5名他、オブザーバーとして当時の中村市長、田中県議会議員も参加した。
 その懇談会で口火を切ったのが大型店誘致推進派の岡本久三郎氏である。
 岡本さんは、
「駅前が開発されれば稲生町がさびれる(というが)むしろ、駅前に降りて買いものしようが見物しようが、その人の流れが稲生町に入ってくることだと思います。......土地にも建物にも金を突っ込んで、丸々全部従業員を雇うんです......稲生町の商人ばかりが商工会議所の会員じゃないんです。......福万さんもいる。立崎さんも建築をやっている。つまり、建物が建つことによって金が市に落ちる。左官も大工も、あらゆる職業に仕事が回ってくる......」
 これに対して反対派の筆頭は南商店街専務の木村祐直さんであった。
 木村さんは、
 「岡本さんは『駅前が開発されて稲生町がすたれるわけでない』とおっしゃっていますが、弘前市にこの実例があります」と、大型店出店の実例をあげて反論した。
 市議会も、反対決議しようという動きがあったが、賛成の議員もおり継続審議となっていた。
 これらに決定的な痛打を与えたのが通産省の「地域の実情からみて大型店が過剰になるおそれの強い出店に関しては指導の目安、審議指導を検討する」という大型店と地元小売店の共存共栄を打ち出した通達であった。
 岡本さんがいうように市街地に大型店をどんどん受け入れていたならその後どうなっていたのかは予測がつかないが、このときはまだジャスコは郊外店を考えていなかったようである。